はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

マナーアップ

2008-12-10 23:42:11 | かごんま便り
 「鹿児島の運転マナーは良くないねえ。ウインカー(方向指示器)を出さずに曲がる車が実に多い……」。県東部在住のWさんの述懐である。繰り上げ定年の後、温暖さにひかれ関東から移り住んで10年余。当地に来て唯一、気に入らないのがこの点なのだという。
 街中をぶらつく時に改めて観察してみた。確かに、合図を出さずに右左折する車がちらほら目に付く。いきなり曲がってくる車のドライバーを見ると、携帯電話を片手にハンドルを握っている人も少なからずあった。
 運転マナーといえば、以前から気になっていることがある。徒歩や自転車で横断歩道を渡る際、きちんと手前で止まらずじわじわ近づいてくる車の多さである。スピードを緩めるのはましな方で、中には早くどけと言わんばかりに眼前に迫る車もある。柄の悪そうなドライバーを想像して運転席を見ると、意外なことにごく普通の善男善女ふうだったりする。
 JR鹿児島中央駅の近くでこんな光景を目にした。横断歩道の信号が青になり、大きな荷物を持った観光客らしき老夫婦が渡り始めた。すると1台の右折車が猛然と突っ込んできて、あろうことか老夫婦にクラクションを浴びせかけた。驚いた2人は走って何とか渡り終え、車はほとんど減速しないまま走り去った。
 これは極端な例だが、当地のドライバーは歩行者や自転車などの交通弱者に対する配慮が乏しいように思う。地元の人は意識していないかもしれないが、転勤族などに聞くと同様の印象を持つ人が少なくない。士族が多かった土地だけに、かごや馬に乗った人が歩行者より優先という気風が染みついている、なんてことはないと思うが……。
 間もなく年末年始の交通事故防止運動(10日~1月10日)が始まる。スローガンは「年末年始マナーアップで事故防止」だそうだ。かくありたいものである。
 鹿児島支局長 平山千里 2008/12/8 毎日新聞掲載

郵便局の傑作

2008-12-10 17:44:21 | はがき随筆
 種子島郵便局の玄関横に来年の干支、牛のオブジェが立っている。竹や稲、木の葉、サトウキビ、空き缶などを活用し、いかにも手作りといった感じだ。局員OBの作だそうだ。アマチュアとは思えぬほど見事な出来映えである。西之表港から市街地に向かう道路がT字路にぶつかるが、その正面で出迎える。
 カメラを向けていたら、車の人が何を写しているのかといった目を向けて通り過ぎる。古き良き時代に思いをはせながら歴史の街を歩き、目にとまったものがあったら歩を止め、改めて眺める……そんな楽しさを思い起こさせてくれるオブジェだ。
   西之表市 武田静瞭(72) 2008/12/10 毎日新聞鹿児島版掲載
   写真は武田静瞭さん提供