はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

葉っぱのフレディ

2008-12-11 12:09:10 | アカショウビンのつぶやき





 数日前の激しい風雨に見舞われた朝、起きてみると台所がやけに明るい。
 冷たい雨と風に一晩中吹きさらされた、もみじが一夜にして裸になっていた。

 台所の窓を覆うように、大きく茂ったもみじは夏のあいだ、強い西日を遮ってくれる。少し暗くなるのが難点だけれど、少々の暗さなんて我慢がまん…。下には、びっしりと色とりどりの落ち葉が積もり、踏むのが惜しいほど。

 今朝は暖かい日差しのなかで、わずかに枝に残ったフレディたちが、風に吹かれながら散りゆくときを静かに待っている。
 私の大好きな絵本「葉っぱのフレディ」を思い出しながらカメラを向けると、またひとひら真っ赤な葉っぱが風に舞いながら足下に落ちてきた…。

感動の日

2008-12-11 10:00:42 | はがき随筆
 生前評価されなかった画家には興味があるが、神髄を理解する能力は僕にはない。だが奄美に移り住んでから描かれた作品からは精魂のようなものを感じる。あばら屋で一人ひたすら描くが売れるものではない。それでも絵の具が続く限り描く。波に削られ不規則に積み上げた本のような岩に立つアカショウビンの赤いくちばし、鋭い目を見る時、田中一村を目の当たりにしたようで涙が出そうな感動を覚える。島々を思わせるように水に浮かぶ常設館を振り返る時、一村はもちろん、世に出してくれた人、その間保存管理してくれた人たちに頭が下がる。
   志布志市 若宮庸成(69) 2008/12/11 毎日新聞鹿児島版掲載
写真はBird Watchingさん