はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

冬の靴音

2011-11-03 21:30:39 | はがき随筆
 ある日曜日、観劇を終えて市民ホールを出ると、広い芝生を渡ってきた風が、体に染みついた歌の残り香をぬぐい去ってくれる。遠くから野球の歓声が聞こえてくる。ぱったりエッセー仲間と会った。「この前のエッセーすばらしかったですね」。褒められて、なにやらうれしかった。「あなたこそA液にB液をそそぐと、どうにかっていう話、あれ良かったですよ」
 二人とも手持ちぶさた。のどが渇いてベンチでちょっとティータイム。自販機のコーヒーはもうホットに変わっていた。サーッと木枯らしがほおをなでた。冬は、もうすぐそこだ。
  鹿児島市 高野幸祐 2011/11/3 毎日新聞鹿児島版掲載

ダリヤ

2011-11-03 21:15:49 | はがき随筆


 ダリヤは初夏の花より秋の方が色濃くて美しい。
「お母さん、ダリヤが咲いたよ」。私が母に電話すると、
母は「ノボタンが6輪開いているよ」。お互いに開花を報告していた。
16年前、母がダリヤの球根を送ってくれた。
それは美しい赤紫の花が咲いた。
帰省した折、お返しに挿し芽していたノボタンを庭に植えた。
母は紫紺の花が気に入り、
遠く離れても巡る季節に開花を報告し、健康を確かめていた。
今、目前の品格さえ感じる美しいダリヤ。「お母さん、咲いたよ」。
もう電話がかけられない。4月前、母は逝った。花を仏壇に供えた。
  出水市 年神貞子 2011/11/2 毎日新聞鹿児島版掲載

「続く放射能被害憤り」

2011-11-03 21:13:27 | 岩国エッセイサロンより
2011年11月 2日 (水)

    岩国市  会 員   横山 恵子

広島に住む友人から「夕方のテレビ番組に娘が出てるから見て…」という電話があった。

それは原発事故で福島から広島へ避難している2人を特集していた。その1人が友人の娘さんだった。

彼女は福島で農業しながら障害者施設で働く夫と結婚、ことし1月に長男が誕生したが、原発事故で急きょ広島の実家に戻った。

現在、夫は山形で働き月に1度、広島へという生活だ。彼女の「子どもがいなかったら福島にいたと思う…」との言葉から、やり場のない憤りを感じた。

原発事故による放射能汚染はどれほど広がるのか、人体にどれだけ悪形響を及ぼすのか。「見えない恐怖」におびえながら暮らさなくてはならない。

それなのに、中国地方選出の国会議員アンケートによると、原発推進派が6割もいることに驚いた。

企業優先か。住むことのできない故郷を、愛する子孫に残してよいものかと問いたい。

  (2011.10.31 中国新聞「広場」掲載)岩國エッセイサロンより転載