はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

黒人霊歌

2011-11-28 21:50:47 | アカショウビンのつぶやき


鹿屋キリスト教会の信愛コーラスは、
鹿児島市で開催された教会の秋のイベントで
黒人霊歌を歌ってきました。
練習期間が短く、まだまだ危なっかしい所もあったのですが、
本番は思いっきり歌えました。


マイクロバスの中でも、
たえ子先生が最後の指導をしてくださいました。

賛美歌はすべて四部合唱になっていますが、
信愛コーラスは女声コーラス。
テナーのパートを1オクタープ上げ、三部で歌います。

テナーは一人だったのですが、Mさんの透き通った高音が、
素晴らしいハーモニーを作っていました。

このイベントは、年に1回、県内の姉妹教会が一堂に集まり、
学びと交わりの時を過ごします。



鹿児島市内教会の、ゴスペルフラは、
手話を交えて聖書のメッセージを伝えて下さいました。

次はクリスマスの賛美ですが、
まず一つ終わってホッとしている
アカショウビンです。 

ヤチャグアン

2011-11-28 21:42:06 | はがき随筆
 10月12日に古希を迎える。久しぶりに女房と温泉にでもいくか。心が躍る。子どもたちも8日の夜にお祝いの食事会をしてくれるという。とにかく魚が新鮮。酒の種類も豊富。飲み手には、たまらない店だという。話だけで喉が鳴る。
 7日夕方、青天の霹靂。右足親指に男の全体重が。開けて病院へ。骨折。医者は飲むなとは言わぬが、うずきますよと。
 8日夜、日本酒が私を招く。いつになくちびりちびり。さすがにうずきを忘れるほど飲む勇気はなかった。温泉はヤチャグァン(台無し)。酒もほろ苦く前途多難の70代の幕開けだ。
  肝付町 吉井三男 201111/28 毎日新聞鹿児島版掲載

残されたもの

2011-11-28 21:36:15 | はがき随筆
 「左右の足音が違うからすぐ父ちゃんだとわかる」と母ちゃんは言っていたなあ。既に二人ともこの世にはいない。
 父ちゃんは南の島の戦場で負傷。銃弾は右大腿部を貫通し野戦病院に収容された。その間に父ちゃんの部隊は全滅した。
 父ちゃんは送還され復職した。そして私が生まれた。が、家は空襲で全焼した。「考えるとどうかなりそうだ」。美術教師だった父ちゃんは若い日の作品のすべてを失ったのだ。
 先日、長野市の無言館へ行った。戦死した画学生たちの作品があった。作品を前に複雑な思いにかられ、私は沈黙した。
  出水市 中島征士 2011/11/26 毎日新聞鹿児島版掲載

遺跡公園

2011-11-28 21:29:49 | はがき随筆
 近くの遺跡公園に散歩に出かけた。足もとを見ると、椎の実がいっぱい落ちている。しかも丸々とした俵椎の実ではないか。早速袋に拾い集める。通りかかった子供連れのお母さん、「何をしてるんですか」と問う。「これを食べるんですよ」。変なおじさん。落ちている実を拾って食わんでも他に食い物ありそうなと行きすぎる。
 家族に話すと着るものさえ替えるとままるで古代人やがなと笑われる。トホホ。
 水に浸し沈んだ分だけ鍋で炒って食べる。山で育った俺らだけのおやつ。子供のころを思いだし懐かしい味に浸った。
  指宿市 有村好一 2011/11/27 毎日新聞鹿児島版掲載

ハエの神様へ

2011-11-28 21:23:58 | はがき随筆
 右足をひきずっています。
 「どうしたの?」「ころんだの」「どんな転び方をしたの?」
 夜中の3時起きのため、私は昼寝をしていました。そこへ、2匹のハエがやってきて「わーい、一人で寝てらあ」と言わんばかりに、私の顔に止まっては飛んでいきます。
 「うるさいなあ」。ハエたたきを持って追いかけましたが、逃げられました。そこで殺虫剤を思い切りかけました。するとその液でツルリ、スッテン。
 「あはははは……祟りだあ」
 「神様、お許し下さい。文化祭までには治して下さい」
  阿久根市 別枝由井 2011/11/25 毎日新聞鹿児島版掲載

暖かな冬の一日

2011-11-28 17:54:38 | はがき随筆
 父の同級生に会いにでかけた。道の両側には、すすきや菊の花が真っ盛りである。尋常小学校から最近までの写真を持ってでかけ、暴れん坊だったとか、勉強はこっち、かけっこはこっちが良かったとか、90歳の2人は80年も前のことをよく覚えていて次々と話題は尽きない。
 耳の遠い2人、話はずれるものの、ほのぼのとあたたかい時がすぎ「同窓会をすればいいな」「戦争に行った人の集まりもな」と話していた。一緒に高菜と鶏そぼろのお弁当を食べて再会を約束し、山道を父の運転する車で帰り着いた。まだまだ2人とも大丈夫なようだ。
  肝付町 永瀬悦子 2011/11/24 毎日新聞鹿児島版掲載

意志が弱くて

2011-11-28 17:49:06 | はがき随筆
 この夏も衰えることなく旺盛に推移、というより季節に関係なく旺盛な食欲。妻が工夫を凝らして作る料理はどんどん肉になっていく。
 肥満を戒めて当然だろうが、ぼくの食欲に触発されるのかさらに腕によりをかける。加えて、ぼくの食欲は3度の食事に止まらず、頭の片隅には「これの次はあれ」みたいな食欲の引き出しがある。この悪循環から脱出しないとあごが無くなって口から下が首の状態と妻に揶揄される始末。食べる方も悪いが、食べさせる側にも問題はある。「夕食はいらない、食欲がないんだ」。一度言ってやるから……。
  志布志市 若宮庸成 2011/11/23 毎日新聞鹿児島版掲載

博士

2011-11-28 17:42:35 | はがき随筆
 大根に伸ばした手が触れた縁で、主婦二人と漬物談義に花が咲く。横からご婦人が私の肩をツンツン。「その漬物屋泣かせで、料亭並みの大根漬けの分量は」と問われる。レシピの披露に「鉛筆貸して」「メモ紙貸して」と、二重三重の人垣の黄色い声。そして、女を捨てた(?)大根争奪の修羅場と化して、面白いように買い物カートに積まれる。女店員の最敬礼にウインクで答えた。昔の乙女でも囲まれたのは「さしかぶいごあんど」(ひさしぶりです)。翌日の売り場に大根漬けのレシピが張り出され、「漬物博士絶賛!」とある。博士は顔を赤らめた。
  出水市 道田道範 2011/11/22 毎日新聞鹿児島版掲載

灰禍

2011-11-28 17:35:24 | はがき随筆
 秋晴れの休日に雨どいの掃除をした。軒どいから集水器にかけて、野鳥が巣作りの細い草の茎などを詰め、そこに桜島の灰がたまったらしい。雨水が配水管に流れなくなっていた。隣家から長ばしごを借り、降灰や細い茎を取り除いた。
 灰だらけになった手を洗い、妻に桜島の噴火をぐちりながらテレビをつけた。福島の民家の除染作業が流れていた。原発からの「死の灰」は色もにおいもしない。どこに積もっているか計器なしには分からない。余計にやっかいだ。黒澤明監督の映画『夢』で放射性物質に色をつけたという場面を思いだした。
  鹿児島市 高橋誠 2011/11/21 毎日新聞鹿児島版掲載

すごい人

2011-11-28 17:28:31 | はがき随筆
 免許更新のため近くの自動車学校に高齢者受講に行く。
 この日は高齢者男女9名で、視力、視力幅、認知症検査、運転感覚テストを受ける。最後に一番緊張する路上運転テストは手に汗がにじんだ。
 最近は高齢者による事故が多いせいか指導講話が熱心であった。幸い無事終了、証明書をもらう。教官に「この教習所の最高年齢の方は97歳で現役の大工さん。学習も優秀で『次回100歳で来ます』と明るく笑顔を残して帰られた」との話に驚嘆し、声も出ない。私の目標は次回82歳まで安全無事故。ささやかな願いである。
  鹿屋市 小幡晋一郎 2011/11/20 毎日新聞鹿児島版掲載