
2012年1月 6日 (金)
岩国市 会 員 山下 治子
余命を告げられた義父を病院から連れて戻り、年明けまで我が家に泊まってもらった。義父はお正月が近いから帰宅できたと思っている。その日は冬至。何よりお風呂に入りたがる義父をゆずをたっぷり入れた湯に夫が付き添って入った。「足が伸ばせてなんと気持ちいいのお」。義父宅は立派な五右衛門風呂だから足が伸ばせないのだ。ゆずの香りに気づき「気持ちいいのお」と何度も。
この時期、私は惜しげもなく風呂にゆずを入れる。義父が植えたゆずは鈴なり。ジャムにコショウにゆずみそ。義父からの忘れられない贈り物だ。
(2012.01.06 毎日新聞「はがき随筆」)岩國エッセイサロンより転載