はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

「自分の器をもっと大きくしたい」

2012-01-30 12:58:13 | 岩国エッセイサロンより
2012年1月13日 (金)

  岩国市  会 員   安西 詩代

初詣でおみくじを引いた。末吉だったが、「神の詞」を読むと心に響いた。「一升枡には一升しか入らない。無理に入れるとあふれてしまう。もっと人のために働いて容器を大きくすることが必要」ということが書いてあった。

なるほど、今年はもっと人のために働かなければ、今の私の小さな容器ではあふれてしまう。どうしたら大きな容器になれるの? 年の初めの難題となった。

数年続けている傾聴ボランティアは月1回の訪問なのに、つらいときや他に楽しい誘いがあると心が揺れるときがある。「ボランティアだから……」と休んでしまうのではなく、「ボランティアだからこそ」と休まないことを心がけよう。自分で約束したボランティアは、契約したのと同じだということを忘れてはならない。

今年も施設に入所している97歳の方が待っていてくださる。彼女の人生のお話は、毎回聞かせて頂いても新しい発見と驚きがある。しっかり心を込めてお話を聴かせて頂いて、自分の行く道の指針にさせて頂く。私の小さな容器が少しでも大きくなり、豊かな心になれるよう。

  (2012.01.13 朝日新聞「声」掲載)岩國エッセイサロンより転載

お斎と母の味

2012-01-30 12:53:27 | 岩国エッセイサロンより
2012年1月30日 (月)

   岩国市   会 員   片山 清勝  

 毎年、年の瀬に「親鸞聖人報恩講」が営まれ、退職後は欠かさずお参りしている。昨年も寒い朝だったが、参拝者で堂内はいっばいだった。法座が終わるとお斎を頂いた。野菜や穀類を中心とする精進料理。この日も地元でとれた新鮮な材料がおいしく調理されていた。このお斎を頂くと肉や魚をそれほど口にできなかった終戦直後の食卓を思い出す。

 わずかな広さの畑で両親が作る大根や玉ネギ、ジャガイモなどがおかずの中心だった。保存できるサツマイモやサトイモもよく並んだ。これらが煮しめや、おひたしになって食卓に上った。キュウリやカボチャ、トマトなど色鮮やかな季節野菜が加わると食欲が増した。

 同じ食材を使いないながら、毎日の食事を工夫していた母はすごかったんだな、とつくづく思う。こうした親の愛情のおかげでひもじい思いはしなかった。

 豊かさが当たり前のようになっている現在、私たちの命をつないでくれている食べ物と、それを作ってくれる人たちへの感謝を忘れてはいないか。お斎を頂き、しばし懐かしい思い出に浸りながら、わが身を振り返らせてもらった。

  (2012.01.30 中国新聞「明窓」掲載)e0hi岩國エッセイサロンより転載