はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

トップ交代

2012-01-17 23:03:48 | ペン&ぺん
 「独善的になったり、社会とかけ離れてはいけない。過去に作り上げた大事なものは残しつつ、改善すべきは改善する」
 12日、九州電力の新社長に就任することが決まった瓜生道明氏が記者会見で語った言葉だ。「やらせメール」問題などで信頼が低下した中でのトップ交代。「(創立から)60年かけてつくりあげた信頼が崩壊したのは、つらい」とも述べ、会見でも厳しいやりとりが続いた。政治献金に関しては「献金は一切せず、不透明な関係はつくらない」と述べている。
 政治や行政との不透明な関係は、どうなっていくのか。新社長就任を受け、玄海原発のある佐賀県の古川康知事は「熟慮された結果だろう。九電として信頼回復に向けた取り組みをしたいということではないか」とコメントした。一方、川内原発がある鹿児島県。伊藤祐一郎知事も「原発再稼働に向け社内の体制を整える一環と理解しており、信頼回復に努めていただきたい」と同様の談話を出した。
 ただし、玄海町民には前社長が取締役に残ることに「看板をかけ直しただけ」「陰の権力が働くことも考えられる」と批判的な意見もある。新社長はトップとしての力量が問われる(引用は13日本紙対社面など)。
   ◇
 中央省庁のトップ交代となる内閣改造が13日、行われた。野田内閣が発足したのは昨年9月。発足直後に鉢呂吉雄・経済産業相が失言の責任をとって辞任。一川保夫・防衛相らが問責決議されるなどして内閣改造にいたった。
 野田首相は地味ながら落ち着いたイメージだったが、内閣発足半年足らずの改造で、その内閣の動きには落ち着きが感じられない。消費税アップという大きな課題を掲げるならば、じっくり落ち着いた中で、内容のある議論が必要だろう。
 こちらも、トップの力量が問われている。
鹿児島支局長 馬原 浩 2012/1/15毎日新聞掲載

ぶっゴマ

2012-01-17 22:43:27 | はがき随筆
 冬になるとよくコマ回しをした。コマは自分で作ったもので直径5㌢ほどの丸太の端を円錐形に削り、8㌢ほどの長さに切り、切り口にクレヨンで渦巻き状に色を塗ったコマだった。長さ30㌢ほどの棒の先に、細く裂いた布を7本ぐらいくくりつけたハタキ状の物でコマをぶって回すのだ。「ぶっゴマ」と呼んで一日中回して遊んでいた。回し方は両手で回してぶって回すが、倒れかかるとコマは少し吹き飛んで周り続けた。
 寒さに震えながら、白い息を吐き、真っ赤な手をして遊んでいた冬を思い出す。
  出水市高尾野町 畠中大喜 2012/1/10 毎日新聞鹿児島版掲載

マイ骨壺

2012-01-17 22:34:53 | はがき随筆
 昨秋、母や妹たちと家族旅行した。行き先は佐賀県有田と嬉野温泉。陶器店が軒を連ねる有田焼卸団地で、食器を探していた母のハートを射止めたのは骨壺。白地に、それはそれは見事な桜が描かれており、床の間に飾ってもおかしくない壺だ。
 父が他界した時、葬儀社の用意した骨壺がありきたりの物だった。焼き物が大好きな父だったのにと思うと、そのことが心残りだった。お気に入りのマイ骨壺が準備できて母は、ほっとしているらしい。知人が来ると桐箱から出して、うれしそうに披露する母を見て、私も好みの柄で注文しようと決めた。
  鹿児島市 種子田真理 2012/1/13 毎日新聞鹿児島版掲載

いのち見つめて

2012-01-17 22:25:33 | はがき随筆
 大半が仏教徒の日本人には関係ないように思えるが、お祭りと思っているのか、子供も大人も大騒ぎする。そのクリスマスが済んで今年も残りわずか。
 世の中は騒然としていて辰の年もあまり幸せは望めそうにない。この4.5日体調が悪く仕事を休んで寝ていた。85歳の老体にとって一人で開業医を勤めるのは酷なのかもしれない。
 一人で寝ていると、さまざまなことを考えてしまうが、生涯現役を誓ったから最後まで頑張りたい。戦争で失ったはずの命だから、ここまで生きたことは幸運だったと思わねばなるまい。
  志布志市 小村豊一郎 2012/1/12 毎日新聞鹿児島版掲載

怠けない

2012-01-17 22:05:56 | はがき随筆
 菜園の隅にカラーを植えた。夏、清楚な純白の花が咲き、殖やしたいと思った。ところが数日後、つややかな葉は黒い大きな幼虫に根元まで食われ、消えてしまった。ところが、翌春、芽を出した。葉が伸び花を期待したが、またもセスジスズメの幼虫のようだ。1.2日で葉を食いつぶされてしまった。無農薬で栽培する菜園に防虫対策を怠け、三度も繰り返し、カラーのくじけない強さに驚いた。
 先日、霜よけにかぶせた落葉をそっと分けて見たら根元は固かった。今年はきっと咲かせよう。年だからとくじけないで怠けないことを念頭に誓った。
 出水市 年神貞子 2012/1/12 毎日新聞鹿児島版掲載

体力

2012-01-17 21:56:22 | はがき随筆
 最終日中止となった大好きな体力表現のグラウンドゴルフ。どうしても終止符を打つべく係の方へ電話して道具箱のキーをお借りする。
 散って乾いたイチョウを掃いてポイントを探してポールを置き、いつも通り開始。一人の故かスムーズに打て、余力があったので結局96打した。二回戦からは体の血流も順調で汗がにじむ。まだいけると三回戦へと。汗が流れるので服を2枚脱いで対処。この間、各回戦2本ずつのホールインワンが出た。でも四回戦は無理かもと思い、止めた。これ、96打が77歳の限界。余力はあれど……。
  鹿児島市 東郷久子 2012/1/12 毎日新聞鹿児島版掲載

 初夢

2012-01-17 21:48:51 | はがき随筆
 「ホーチェチョ」。空耳か。足を止めると、また「ホーチェチョ」。うぐいすだ。縄張り意識が強いので、口笛を吹くと、別の山からも応じてきた。まだ鳴き声は、さまになっていないが、一足早く春を感じさせてくれた。平成23年の漢字一文字は「絆」だが、野鳥と人にもあるよね。だから、君らは捕獲禁止として守られている。突然けたたましい鳴き声。君の天敵の百舌くんだ。あの鋭い目は君を探している。油断あそばすな。
 さて今年最後の暦をめくった。初夢は竜の背中で「ホーホケキョ」とさえずる姿を見たいものだ。
  姶良市 山下恰 2012/1/12毎日新聞鹿児島版掲載

孫の守りで妻支える

2012-01-17 18:58:25 | 岩国エッセイサロンより
2012年1月16日 (月)

岩国市  会 員   山本 一

昨年10月、妻が小さなパン屋を始めた。毎週日曜日だけ、午前11時から自宅玄関がにわか店舗となる。

67歳にしての妻の新たな出発は、私の生活に少なからず影響を与えた。看板やチラシなどのパソコン作業や周辺の掃除、テーブル類の配置、車の移動など早朝の開店前準備は私の役割になり、生後11ヶ月になる孫の守りが降りかかってきた。

娘は以前から妻との約束で、土曜日は我が家に孫を預け、趣味の会に参加している。開店前日とあって、妻は仕込みなどで手が取れない。さらにその翌日は娘が店の応援に来る。開店以来、土日はずっと、私は孫の守り役となった。

ある日、妻と娘に「2人共自分の趣味で楽しそうだが、こちらは子守で土日は何もできない」とつい言ってしまった。

悔やんだが遅い。「孫がかわいそう」の妻の一言が胸に刺さった。

年頭にあたり生活の軌道修正をあれこれ模索している。

(2012.01.16中国新聞「広場」掲載)岩國エッセイサロンより転載