ピンポン。誰か玄関に。60代ぐらい? 会話の不自由な見知らぬ男性。驚いて何ごとかと案じたが、それほどでもない。遠方から敷物じゅうたんの販売。必死で強気の願い。だが、ぜいたくはできない。1万8000円、1万5000円と値下げ。その懸命さにまけそうだ。「奥さんは」とうかがう。「大腸がんで腹に袋を」と即答。人ごとでもない。私とてなる場合も。同情心が芽吹く。「1万なら買います」。納得。「どうも」と言葉を残し車の方へ。後を追って、お茶の粗品を差し上げ「お元気で」と激励。満面に笑みを浮かべ再びお礼され発車。
肝付町 新富 永瀬悦子 2012/3/15 毎日新聞鹿児島版掲載
肝付町 新富 永瀬悦子 2012/3/15 毎日新聞鹿児島版掲載