はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

母へ 2

2012-03-30 21:53:07 | はがき随筆
 見えますか彼方から。あなたのひ孫が寝返りを始めたそうです。順調な発育。嬉しいです。お母さんが手助けした東京の出産児も同じだったでしょうか。それとも昭和5.6年のこと、食糧事情や生活環境の違いがあったでしょうか。逝ってしまって10年。今ごろになりお母さんのことを思い出します。中でも昭和14.15年ごろ食べたカレーライスの記憶は鮮やかです。ジャガイモとタマネギの季節。小麦を溶いた鍋へカレー粉を振り込んでルーを作り……。3日に一度は作ってくれました。お母さんのルーは加減よく、我が家の絶品でした。有り難う。
  鹿児島市 東郷久子 2012/3/30 毎日新聞鹿児島版掲載

昭ちゃん

2012-03-30 21:47:24 | はがき随筆
 無職1年目を迎える。創作やら読書やウオーキングやらと数えきれぬほど用事が生じてくる。創作・読書の方、考える時間もたっぷりある。暇なしの一言に尽きる。
 日記の方、一日2㌻の消化に挑む。3月末でちょうど1年。ずーっと続けられたこと、無職の効か。今以上に自分が自分を見つめる時間が増してきた。書きつづる良さを感得する。
 2年目の生活がスタートする。ただの昭ちゃんでなく、一歩でも半歩でも前進する昭ちゃんに今、思考中の昭ちゃんである。小さな夢も秘めて生きていけそうな昭ちゃん。
  出水市 岩田昭治 2012/3/29 毎日新聞鹿児島版掲載

リサイクル

2012-03-30 21:41:32 | はがき随筆
 家の中を整理しようと傘棚をあけたら、骨の曲がった雨傘が奥にあった。思い出のある傘だが、片づけることにした。
 廃品回収に燃えないゴミとして出せるが、布を外すことになっている。布を外しながら、まだきれいな布がもったいなくてバスキャップを作ろうと思いついた。円形に切り、外回りを三つに折りミシンにしてゴムを通した。その夜使ってみた。格好いい。残り布で腕カバーも作ってみた。寒い今、袖口をあまり上げなくても濡れない、防水だから便利だ。バスキャップや腕カバーに替わっても花柄の傘布は楽しい思い出を残している。
  出水市 年神貞子 2012/3/28 毎日新聞鹿児島版掲載

「手 紙」

2012-03-30 12:03:35 | 岩国エッセイサロンより
2012年3月30日 (金)

   岩国市  会 員   樽本 久美

 大学生時代、下宿をした。大島のおばあちゃんはたいそう心配した。「久美が下宿してだいじょうぶかいね」と。いつも遊びにいくと、私の大好きなイモを食べさせてくれた。そのおばあちゃんに母がそっくりになってきて、私も母にそっくりである。
 その母が足を悪くして、家の中でもつえが放せない。たまに母の家にいくと「2階の部屋のあれをとってきて」と頼まれる。
 ある日、母の机の引き出しを開けると、たくさんの私からの手紙があった。下宿先から出した手紙や母の日のメッセージカードなど、よくもこんなものをと思うものまで捨てずにとってあった。
 大学生時代、母はよく小包を送ってくれた。そこには必ず「手紙」が添えてあった。母からの手紙には愛情が詰まっていた。思いやりが感じられた。残念ながら私は母になることができなかったが、その時の「おまもり」は今も持っている。
 結婚したら必ず母親になるとは限らない。子供のいない夫婦も多い。今まで何度も「お子さんは?」と聞かれた。何度も何度も嫌な思いをした。この年になってやっと聞かれなくなったけれど。
 「みくちゃん、元気ですか?」
 私の心の中の子供に手紙を書いてみた。
 今はたまに「みくちゃんあての手紙」を、私のノートに作成中。
   (2012.03.30 毎日新聞「女の気持ち」掲載)岩國エッセイサロンより転載