はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

母の入院

2012-03-18 18:33:13 | はがき随筆
 母は1月の末に、肺炎を起こしました。
 「家で看取りますか?」と言われた時は、足がガクガク震えました。
 まだ入院中で、毎食の食事介助に通っています。
 私の左腕が急に動かなくなったのは(もしかして、父が迎えに来たのでは……)という精神的なものだったようです。
 足も痛くて、手すりにつかまっていたのに、今ではさっさと上り下りしています。
 「今日は起き上がりそうでしたよ。手に力も出てきたよね」
 94歳。
 誕生日は格別でした。
  阿久根市 別枝由井 2012/3/18 毎日新聞鹿児島版掲載

養子娘

2012-03-18 17:58:49 | はがき随筆
 15年前、一人娘に婿養子をとった。大学のクラブのご縁で奈良から来てくれた。養子娘はわがままときくが、そんなことはない。ただ遠慮がないのだ。母娘のバトルが始まる。ものの例えに「白を黒と言われてもハイ、の心が大切」「いいえ、白は白です」と切り返す。
 「うちの嫁はひとこと言えば十口くらい言い返すから」。そばでににやにやして聞いていた婿殿「嫁じゃなく娘でしょ」。「いいえ、こんな娘に育てた覚えはありません。あなたも少しは女房教育をしてください」。とんだトバッチリに「なんで僕が怒られるの」と納得いかぬ顔。
  鹿児島市 内山陽子 2012/3/17 毎日新聞鹿児島版掲載

数字の縁起担ぎ

2012-03-18 17:52:54 | はがき随筆
 私事で恐縮だが、平均して夜中に3度はトイレに起きる。前立腺肥大ではあるが、残尿がないから手術はしなくてもよいという診断である。
 そんなことより本題は起きた時間である。トイレにデジタル時計がついているのだが、1回目が1時11分、2度目が3時33分、3度目は5時55分。1.3.5と数字の並びが3回も続けば、何か予想外の幸運が舞い込んでくるような気がするではないか。だが、商店街の大売り出しでもらった抽選券は何も当たらなかった。「そんなことあるわけないでしょ」。カミさんは全く相手にしてくれない。
  西之表市 武田静瞭 2012/3/16 毎日新聞鹿児島版掲載

春のかおり

2012-03-18 17:46:11 | はがき随筆
 1日8000歩を目標に朝夕散歩している。天気がいいと買い物にも歩くので1万歩も無理ではない。一方、雨だと居間から台所を行ったり来たり。2000歩くらいにしかならない。働いていたころは歩きながら夕食の献立を考えたりで季節を感じることはなかった。カラスも井戸端会議のおばちゃんたちみたいに、何やらカラス語で話をしている。通い慣れた道だと畑仕事の方とも顔なじみになり「デコンを持っていかんな」と大きな大根をいただく。両手で抱え筋肉トレーニングして帰る。気持にゆとりができると何もかも新鮮に見えて楽しくなる。
  阿久根市 的場豊子 2012/3/14 毎日新聞鹿児島版掲載