はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

初春に思う

2015-01-15 20:31:50 | はがき随筆
 「羊が1匹、羊が2匹、羊が3匹……」。しかし、どうして羊なんだろう。羊が優しいからでしょうね。「狼が4匹」では怖くて寝られませんよね、やはり羊ですよ。それに羊は昔から非常に人類のためになっています。羊毛は衣、マトンは食、毛皮は防寒、皮はいかだ、ほかにもいろいろ役に立っています。凶暴性がないので飼育しやすいのです。さあ、その羊の年がやって来ました。今年は未年です。未年がくると未来が見えて来ます。クールジャパンの良い年ですよ。希望を胸に抱いて一緒に参りましょう、元気を出して。
  鹿児島市 野幸祐 2015/1/11 毎日新聞鹿児島版掲載

楽しみも

2015-01-15 20:22:46 | はがき随筆
 文化教室2015年冬の講座の表紙に、妻の陶芸作品(羽子板、靴、花車)が、ものの見事に掲載された。17年間、妻が陶芸に打ち込んだ成果であろう。羽子板。他にまねの出来ないほどの出来映えで、年度もニコニコ喜びにあふれている感じである。天文館の料亭? に飾ってくださると購入していただく。妻の喜び、創作意欲は倍増している。花車は玄関にと、靴だけは我が家に。娘の嫁ぐ時に一緒にか。2015年の夢も脹らみを増していることだろう。粘土は、妻の芸術性で生かされ、新しき作品に生き生きか。15年、楽しみも増すか。
  鹿児島市 岩田昭治 2015/1/10 毎日新聞鹿児島版掲載

ぼくの昭和史3

2015-01-15 20:15:53 | はがき随筆
 終戦の意味を理解できないぼく。防空頭巾をかぶり、手をひかれて松の下に隠れる必要が無くなったことと、つい先日新聞を見ていた母が、すごい爆弾が落ちたとつぶやき、自分たちへの恐怖を感じたが、その不安が消えたように思えた。
 情報源の4球ラジオを真剣に聞く母が、戦争が終わったとは言わなかったし、聞き取りにくい音声を理解するには幼すぎる。ただ晴れて暑い日の記憶はある。一方、状況の変化は歴然で、電球を覆う黒い布は無く、警報の放送も消えた。しかし、不安が全て消えたのは、復員した父の膝に抱かれた時だと想う。
  志布志市 若宮庸成 2015/1/9 毎日新聞鹿児島版掲載

波音

2015-01-15 17:33:51 | はがき随筆
 NHKの朝ドラ「花子とアン」で白蓮事件の場面を見て、亡き母が「昔、材を捨て心の富を選択した絶世の美人、平和の語り部がいた」と話したのを思い出す。母が語った美人とは歌人、柳原白蓮のことではと憶測。白蓮を知りたい衝動にかられ、妻に「何か知らないか」と尋ねる。いちき串木野市に白蓮が来た形跡があるという。長崎鼻に赴くと、波打ち際に白蓮の歌碑が建つ。「右も海 左も海の 色蒼く 沖の小島に 想ひは ふかし」と刻んである。さざ波の音を子守唄に戦死した息子への鎮魂歌か。今、我も白蓮と同じ波音を聞き,平和な海を見る。
  出水市 宮路量温 2015/1/8 毎日新聞鹿児島版掲載

初投稿

2015-01-15 13:21:02 | はがき随筆
 ずぅ~と、はがき随筆の愛読者で、朝の夫婦の会話にもよくのぼり、1度もお会いしていないのに、紙面を通して旧知の友であるかのように、その方の心配もしたりした。お会いしてみたくてペンクラブの会に出かけることに。前夜は興奮して眠れず、夫にも私の興奮が感染し、夫婦で初の真夜中お茶会になりました。恋人みたいに。
お会いしてみて、皆さんが夢を追っかける若者のようにキラキラ輝いて、初参加の私を温かく迎えてくださり、楽しいひとときを過ごしました。皆様に励まされ、はがき随筆初投稿となりました。
  鹿児島市 永野町子 2015/1/7 毎日新聞鹿児島版掲載

子別峠

2015-01-15 13:12:09 | はがき随筆
 胸が張り裂けそうになる響きの峠がある。「子別峠」という名のついたその地は、熊本県の秘境・五木から八代へ向かう平沢津を通る途中にある。
 峠へのつづら折の小道の所々には、紫の可愛い野菊が風に揺れて咲いていた。私には、親と、泣く泣く別れた薄幸の子供の形見草のように思えた。
 いよいよ八代へ向かう山の境近くには子別峠という道標がひっそりと立っている。昔、口減らしのため八代や人吉へ子守奉公に出され、歌われたという「五木の子守唄」。その旋律が耳によみがえり、私は心が痛んで耐えられないほどだった。
  出水市 小村忍 2015/1/6 毎日新聞鹿児島版掲載

灰と共に生きる

2015-01-15 13:02:29 | はがき随筆
 錦江湾にそびえる薩摩の壮大な桜島は、薄灰色の噴煙をなびかせている。灰に生きる島の人々の暮らしは家の周辺に防風林、防砂林に一葉の樹木が植えてある。風が吹くと灰が舞い、人の体、髪の毛に混ざる。婦人は手拭いをかぶり、絣の上衣、もんぺを着用。ビワ、大根、小ミカン、サツマ芋。農産物も水、土壌、空気が会う。里の産物のゆで芋を乾燥したものや大根を桂むきにして軒先につるす。芋を細かく砕いて粉にする。団子の粉に加工。島に生きる人の知恵ははちきれんばかりだ。全てをお手本に。教訓に。灰に負けずに明日の夢に懸けよ。
  姶良市 堀美代子 2015/1/5 毎日新聞鹿児島版掲載

まさかまさか

2015-01-15 12:54:21 | はがき随筆
 灰色の冬空となる頃。1本の電話が鳴った。小1時代の担任の恩師が長野から里帰り。子どもたちに会いたいと同窓生からの連絡だった。そして「まさか」の60年ぶりの再開。伺うと、96歳とは信じがたい姿勢に「さすがは師」と驚いた。懐かしい思い出の中、先生ヒッケワスレていました。60年前の宿題「絵日記」と絵を差し出すと、じ~っとその絵を眺め笑顔で一言。あなたにはこんな才能があったんだね。旅立った仲間もいるが、96歳の師にこんなお褒めをいただき、健康であることに感謝とあの日が走馬燈のように浮かんできた。
  さつま町 小向井一成 2015/184 毎日新聞鹿児島版掲載