はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

あの日から…

2015-01-17 17:58:26 | アカショウビンのつぶやき
阪神大震災から20年、今朝の新聞は震災関連の記事で埋まっている。

たくさんの痛ましい別れがあり、人に語れないような悲惨な状況を体験した方々も多い。


あの朝は私にとっても、被災者の方々と同じように切ない思い出が残る。

あの日、私は手術後1週間目のまだ動くこともままならない夫と鹿児島市の病院にいた。
長引く看護に疲れ果てた私は、夫のか細い声になかなか起きられず、やっと起き上がった時は、テレビの画面いっぱいに火の手が上がる場面に釘付けになった。

しばらく無言で眺めたあとにつぶやいた私の一言は。

「お父さんこの地震が鹿児島でなくて良かった、ここだったら私たちは助からなかったよね…」

夫は無言だった。
そして気付いた、なんと言う言葉を口走ったのだろう…と後悔した。

その時、夫は末期の腎臓がんで、手術しても余命6ヶ月と告げられていた。
そして半年後、夫は自宅での看取りの中で静かに命の灯が消えた。

そして20年、生涯忘れることの出来ない、震災と夫との別れ。
私にとっても長い長い20年だった。


神戸でも震災を知らない世代が半数となったという。
地震国日本の宿命…地震はいつどこで起きるか分からないし、地元桜島の活発な活動も収まる気配はない。
必ず起きる、大災害にどう対処するのか?

日本人の叡知が問われる所だろう。

今年の年賀状

2015-01-17 17:45:49 | はがき随筆
 年賀状作りは夫の担当。これまで、親戚へは夫婦連名で、それぞれの友人、知人には個人名で作ってきた。3通り必要なのだ。手間がかかる。「もう簡単に2人の連名でいいかも」と話すと、夫は瞬時に怒り「自分の好きなようにする」と。
 一言返そうとしてやめた。せっかくやる気でいるのに、夫の気持ちをそいでしまった。「ご免、お父さんに任すよ。あと何年一緒にいられるか分からないから仲良くしよう」。無言の夫。作られた年賀状は一通りで、表には個人名で、裏には夫婦の名前が並んでいた。もらわれた方々は戸惑われたでしょうか。
  いちき串木野市 奥吉志代子 2015/1/17 毎日新聞鹿児島版掲載

幾つになっても

2015-01-17 17:37:08 | はがき随筆
  岩国市  会 員   吉岡 賢一

 目が覚めると、真っ新な肌着上下が枕元に置かれている元旦。寝起きのぬくもりを捨て、冷たい肌着に袖を通す。子供心に抵抗はあったが、元気で爽やかに過ごせと願う親心の前には不平など言えはしなかった。 
 そんな験かつぎにも似た習慣も、大きな時代の流れと共に忘れ去ったまま大人になった。それでも「正月は冥土の旅の一里塚」と、浮かれ過ぎを戒めた母の声は今も耳に残っている。
 365日を一区切りに、人並みに英気を養った正月も往った。新たに始まった七十路のこの1年。どんな冒険や出会いが待っているのだろうか。
    (2015.01.17 毎日新聞「はがき随筆」掲載) より転載

小6の孫 コイ魂に火

2015-01-17 17:33:56 | 岩国エッセイサロンより
2015年1月17日 (土)

    岩国市   会 員   吉岡 賢一

 孫3兄弟の真ん中で小学6年生の次男は、おとなしく、絵を描いたり本を読んだりするのが好きなタイプ。昨年9月、そんな彼を誘って広島東洋力ープの応援に行った。
 ルールも完全にはのみ込めていないから、野球よりもマツダスタジアムの施設や店のにぎわいを喜ぶだろうと、高をくくっていた。 
 球場に着き、うねりをあげる大声援に少し慣れたと思ったら、人が変わったように、自己流ながら真剣な応援を始めた。
 ヌンチャクバットを打ち鳴らし、大声を上げて一役一打に喝采とため息。カープは完敗したが、後ろの老夫婦が「お兄ちゃんの応援のおかげで楽しかった」と喜んでくれた。
 新生緒方カープ。たゆまぬ「常昇魂」で、今年こそりーグ優勝はもちろん日本一を勝ち取ってくれるに違いない。
 ふとしたことで火が付いた孫の新たな成長ぶりと合わせ、期待に胸膨らむ一年になりそうだ。一試合でも多く、彼を誘ってスタジアムに通いたい。

    (2015.01.17 中国新聞「広場」掲載)岩国エッセイサロンより転載