はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

聞かぬが花

2019-06-01 14:08:34 | 岩国エッセイサロンより

2019年6月 1日 (土)

  岩国市  会 員   吉岡 賢一


 山笑う青葉若葉のすてきな季節に、防災スピーカーから「クマの親子発見、要注意!」の予期せぬ警報が発せられた。幼稚園や小・中学校が多くある地域だ。
 「子どもたちを守らねば」と色めき立った。
 孫君の小学校でも、数日間保護者の送り迎えが義務づけられた。「母さん、何かあったら大変じゃけー来なくていいよ。その代わりじいちゃん迎えに来てよ」。4年生にして、母親はこの世で最も大切な存在であり、看護師という仕事が忙しいことを知っている。
 ならばじいちゃんはどうなん? 聞かぬが花、言わぬが花。孫君に幸あれ。
   (2019.06.01 毎日新聞「はがき随筆」掲載)


賞味期限付きビル

2019-06-01 13:56:23 | はがき随筆

 中近東生れの打楽器・ダルブッカのレッスンを月1回受けている。講師は、この太鼓の演奏者でもあるとともに建築家。

 このほど、鹿児島市の中心街にある地上4階地下1階の築51年のビルを再生する、アートディレクターを任された。古本屋、ダンススタジオ、ギター教室、彫刻スタジオといった文化的テナントから、集いの場であるカフェ、ゲストハウスまで12店が入居する、シェアオフィスにリノベートした。彼自身ハンマー片手に壁などを壊しながら。

 このビルは5年後に解体。若い入居者が新たな場所へ旅立つための、巣箱ビルでもある。

 鹿児島市 高橋誠(68) 2019/6/1 毎日新聞鹿児島版掲載