はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ホタル舟

2019-06-23 21:56:43 | はがき随筆

 さつま町の川内川河川敷でホタル舟を運航していると知り、ぜひとも行きたくなった。

 車の運転ができないので夫に頼みたいが、あまり仲がよくないので気が引ける。高齢ドライバーの事故も多いし、日々老いていく。ためらっていたら「オレも行きたい」。心中を見透かされた感じ。でもよかった。

 3隻くっつけて安定よくした舟が10人ほど乗せて動き始めた。暗闇に目をこらすと、ほのかな光があっちにこっちに。歓声があがる。ホタルの数が増えていく。水面にも光が映えて夢心地……。まさに夫様様のおかげ。得がたい経験ができたのは。

 鹿児島市 馬渡浩子(71) 2019/6/23 毎日新聞鹿児島版掲載


牛のお産

2019-06-23 21:47:34 | はがき随筆

 朝食後つけっぱなしのテレビに目が釘付けになった。女子高生が牛のお産を手伝う場面だ。入院している98の義父がすぐ浮かんだ。義父は私たちが大阪からUターンするまで養鶏の傍ら牛を飼っていた。30年近く前の出来事にオーバーラップした。

 朝、義父の大声に起こされ牛小屋に入ると眠気は飛んだ。母牛は逆子ため産めずにいた。子牛の足にロープをくくり引っ張り出した。無事に安堵した。

 逆子は癖になるらしく、それから2度早朝に起こされた。牛のお産に立ち会おうとは夢にも思わなかった。が、3度の帝王切開したわが身を重ねた。

 宮崎県串間市 武田ゆきえ(64) 2019/6/22 毎日新聞鹿児島版掲載


手作りのネックレス

2019-06-23 21:41:05 | はがき随筆

 関東の次女が、古いネクタイと木のビーズを使って手作りしたネックレスを送ってきた。社交ダンスをしていた数年前までは装飾品を楽しんでいたが、外出があまりない今では、引き出しに眠ったまま。

 せっかく送ってくれたので着けてみたい。そうだ、月2回のレクリエーションダンスがある。当日、早速首へ。友が「わーいいネックレス。貸して」と自分の首に。「軽くてすてき」。別の友も「私にも貸して」。2人してとてもよく似合う。

 いつもは疲れて帰宅するが気分ルンルン。ネックレスのおかげか。夜、次女に電話で報告。

 熊本市中央区 原田初枝(89) 2019/6/21 毎日新聞鹿児島版掲載