はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

いい人生

2008-08-13 15:05:31 | はがき随筆
 お仕事は?と聞かれて散歩屋と答えたことがある。もちろん冗談だが、日常から散歩は欠かせない。歩く楽しみの他に季節の移ろいを感じたり人との出会いがある。Aさんもそんな一人で、水平線に目をやりながらゆっくり話す。「いい人生だと思います。若いころは野心や夢があっていろいろありましたが結局、平凡なサラリーマンで終わってみると、大過なくというか平穏な人生が実に有り難い。仕舞い良ければすべて良しの心境です。この自然の中なら問題ないでしょう」願望かしら。達観かしら。
   志布志市 若宮庸成(68) 2008/8/12 毎日新聞鹿児島版掲載

地球の温暖化

2008-08-13 14:55:20 | はがき随筆
 先日本州のある小都市で39度という猛暑を記録したという。確かに今年の夏は例年にない異常な暑さが続いている。北海道でさえ真夏日が幾日もあったというから驚くほかない。日本列島がすっほり熱帯域に突入したような錯覚さえ起こさせる。
 真夏日や猛暑とかいう用語で報道されても動じなくなった。最近よく耳にする「地球の温暖化」が案外、原因なのかもしれない。だとすれば今後徐々に、動植物界の生態にも、計り知れない多大な悪影響を及ぼすことになるのは必至であろう。
 ああ、今夜もまた寝苦しい夜が私を待っている。
   霧島市 有尾茂美(79) 2008/8/10 毎日新聞鹿児島版掲載

永久の平和を

2008-08-13 12:23:30 | アカショウビンのつぶやき
平和祈念像

平和祈念像は被爆10周年にあたる1955年8月に完成しました。
垂直に伸ばした右手は原爆の脅威を、
水平に伸ばした左手は平和を、軽く閉じた目は原爆犠牲者の冥福を祈っています。
「8月9日」は『長崎被爆63周年』です。
お持ち帰りいただき、被爆地・長崎からの思いを汲んで頂ければ幸いです。
(2008年7月27日:おたくさ)




おたくささんのホームページはこちらから

 上記の写真と文章は、長崎市にお住まいの、「おたくさ様」のホームページからお借りしました。おたくささまは、核廃絶と人類の平和を願い、ホームページやブログで長崎の人々の思いを代弁し、平和への願いを発信しておられます。

 間もなく終戦記念日が巡って参ります。あのとき、11歳だった私は、あの日のB29の爆音が聞こえない平和で真っ青な空を覚えています。戦時中の辛い体験を語り継ぐ人が少なくなりました。

 被爆地長崎では「若い世代は『微力だけれど無力じゃない』」を合い言葉に、核兵器廃絶のため「高校生1万人署名活動」を続けています。若い世代に平和の願いを託していける希望が見えました。
 北京オリンピックのエネルギーが、世界の融和と協調に向けられたら…と願わずにはいられません。小さな希望の灯を守り続けたいきたいものです。


「老い」に挑戦

2008-08-09 12:48:22 | はがき随筆
 7月1日、79歳の誕生日を迎えた。かねて意識していたが当日、子や孫の祝いの電話を受け更に実感した。古稀のころ、初老の先は「老い」と思ったその老いが今の「老い」かな?
 最近感じる「老い」の現象とは、▽階段の上り下りに手すりをつかむ▽ヨイショと掛け声をかける▽背を曲げ腰をたたく▽ど忘れ、記憶喪失が気にかかる▽同じことの繰り返し▽長続きせず息が切れそう▽新聞、雑誌が読みづらい▽つまずきやすい──ことだ。
 決して老け込んではならない。さつま狂句や川柳の学習に打ち込んでいる。
   薩摩川内市 下市良幸(79) 2008/8/9 毎日新聞鹿児島版掲載

母の笑顔

2008-08-08 20:52:05 | はがき随筆
 はがき随筆の愛読者だというみつるおばさんが、母に会いに来てくださった。親類で、90歳の母とは旧知の仲である。
 「8年ぶりかしら。若いころも愛らしかったけど、こんなにいい顔は初めてよ。きれいだわ。すっかり安心して暮らしているのね。会えてよかった」
 9年間、寝たきりだった祖母を家で看護していた叔母(母の弟嫁)も、私につねづね言う。「由井ちゃん。お母さんの笑顔が答えよ。みんな分かるのよ」
 そうか……。もっと優しくせんといかんなあ。 オーシャンブルーが笑い転げるように咲いている。
   阿久根市 別枝由井(66) 2008/8/8 毎日新聞鹿児島版掲載

あったぁ!

2008-08-07 18:03:30 | はがき随筆
 嫁のつわりがきついというので、2歳になったばかりの孫を10日ほど預かった。孫はママを尋ねて私たちを困らせることもなく、元気に過ごしていた。
 時々ひざに乗ってきて私の豊満な胸を恥ずかしそうに触っては喜んでいた。ある夜寝たふりの私のおなかの上で孫が遊びだした。そして突然「ない。おっぱいがない!」と慌てた様子で、孫は私のパジャマをたくし上げだした。ホントだ。ばあばの胸は真っ平ら。私は必死に笑いをこらえて寝たふり。
 あらわになった胸の脇に乳首を見つけた孫は「あったぁ!」。大喜びでつまんだ。イタタッ。
   出水市 清水昌子(55) 2008/8/7 毎日新聞鹿児島版掲載

ベランダ菜園

2008-08-06 20:56:01 | はがき随筆
 裏の排水工事の都合で1㍍四方の空き地が確保できたので、ゴーヤとヘチマを植え、ついでにプランター数個にトマト、ナス、ピーマンを植えた。
 これまでは草花でにぎやかだったベランダが、にわか菜園となった。大げさに言えば我が家の食糧自給対策の一環だ。
 朝一番にベランダに下りて一本一本点検する。トマトは黄色のかれんな花を風に掲げ、ナスはうつむくように薄紫の花なをつける。時にはカメムシやテントウムシを割りばしで退治してやる。楽しいと言うよりときめきのひとときだ。代々受け継いだ百姓の血の騒ぎかもしれない。
   鹿児島市 福元啓刀(78) 2008/8/6 毎日新聞鹿児島版掲載

極楽の余り風

2008-08-06 20:49:01 | はがき随筆
 車を運転しながらラジオを聞いていたら男性アナが「自分の故郷では蒸し暑い夏の日に吹く涼しい風のことを極楽からの余り風と呼んでいる」と紹介していた。子供のころ、小学生から中学生までだが、母から畑や田んぼの草取りをさせられた。とりわけ夏休みは明けても暮れても草取りだった。川では友達の歓声がしていた。暑さの余りべそをかいたこともあった。父を早くに亡くした母の苦労を思うと、学校の成績より草取りの成績が先のようだった。その母も11年前に84歳で亡くなった。今ごろ、極楽で涼しい風に吹かれて過ごしているのだろうか。
   志布志市 武田佐俊(65) 2008/8/5 毎日新聞鹿児島版掲載

家族の大黒柱

2008-08-04 20:15:57 | はがき随筆
 結婚して早45年にもなる。3人の子供にも恵まれた。転勤で各地に家族ぐるみで移住した。そして、晩年の両親とも数年間一緒に暮らせた。
 気がついてみるとすでに古希を過ぎ、いつの間にやら2人だけの生活。「いろいろ頑張ってきましたね」と妻が言ってくれるが、頑張ってきたのは妻の方である。24歳の春より今日まで、嫁として妻として母としてそれぞれの役目を果たし、今では主婦の座を確固たるものにした。子どもたちをはじめ、私のいとこまで相談事はみんな妻にする。
 最近、妻は我が家を束ねる大黒柱になってしまった。
   志布志市 一木法明(72) 2008/8/4 毎日新聞鹿児島版掲載

主語と述語

2008-08-04 20:10:05 | はがき随筆
 すっかり耳が遠くなった。
 妻は面倒なのか、主語(1語)だけの発声、単語の連続。述語の部分がない。
 聞き出すのにひと苦労。時には口げんかも。
 昔、軍隊での命令伝達に、必ず復唱したことを思い出す。
 時にはお互いの思い込みで、手違いや失敗も。
 泣き笑いの人生。
 2人で半人前。
 きょうも何とか無事。
 一日一日を平穏に、安らかに過ごしていきたい──と、妻と話し合う日々。
   薩摩川内市 新開 譲(82) 2008/8/3 毎日新聞鹿児島版掲載

主語と述語

2008-08-04 20:09:52 | はがき随筆
 すっかり耳が遠くなった。
 妻は面倒なのか、主語(1語)だけの発声、単語の連続。述語の部分がない。
 聞き出すのにひと苦労。時には口げんかも。
 昔、軍隊での命令伝達に、必ず復唱したことを思い出す。
 時にはお互いの思い込みで、手違いや失敗も。
 泣き笑いの人生。
 2人で半人前。
 きょうも何とか無事。
 一日一日を平穏に、安らかに過ごしていきたい──と、妻と話し合う日々。
   薩摩川内市 新開 譲(82) 2008/8/3 毎日新聞鹿児島版掲載

トマト

2008-08-02 06:38:04 | はがき随筆
 夏はギラギラした太陽の暑さともう一つ私を熱くする物がある。20坪程の菜園から収穫される夏野菜だ。生産者は、自作の野菜を肴に晩酌するのを何より楽しみにししている夫である。
 目覚めると、台所に真っ赤な大玉トマトとキュウリの山。数種類の漬物、ソース、ジャムなどを作り置きし、お裾分けしても追いつかない。うれしい悲鳴を上げながらも純粋で安全な野菜は夏バテにもってこいだ。特に完熟トマトのジュースは格別においしい。夜はキュウリバックでエステ気分。
 赤いトマトは大粒のルビーになり誕生日を祝ってくれた。
   薩摩川内市 田中由利子(67) 2008/8/2 毎日新聞鹿児島版掲載
写真は桜香さんより

技を盗む

2008-08-02 05:58:25 | はがき随筆
 シルバー人材センターで清掃作業をしている。夏の暑さにややもするとへばりがち。75歳の老骨にむち打って頑張るが、いかんせん息が続かない。水分を補給し、頭も冷やしてみるが息が苦しい。ゼイゼイ言いながらふらふらする始末だ。
 寄る年波には勝てないとあきらめていた矢先、テレビで三浦雄一郎さんのエベレスト登頂を見た。あの酸素の希薄なところでフウフウ行って登っていた。よく見ると口を前に突き出して息を吐いていた。自分とは反対だ。
 早速翌日まねをして息を吐いてみた。確かにだいぶ息が楽になった。さすがは先達。感謝。
   鹿児島市 高野幸祐(75) 2008/8/1 毎日新聞鹿児島版掲載