はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

世話役の責任果たす自信がない(老化する心)

2012-01-26 10:53:27 | 岩国エッセイサロンより
2012年1月26日 (木)

岩国市 会員   山本 一

退職して丸8年が経過した。地域の活動や趣味の会では一転して若手と呼ばれ、世話役を依頼される。今も、所属する趣味の会から要請を受けているが、かたくなに断り続けている。

入社して42年間、一貫してマネジメント中心の仕事で過ごした。組織の一人ひとりが自分の特性を生かし、命令や指示ではなく、自分で考えて行動し、組織としてまとまる時、最大の力を発揮すると信じてきた。そのマネージャー、すなわち組織の世話役は、関係する沢山の人たちの人生に少なからず影響を与える。時に、その責任でつぶされそうになったが、経営管理への思い入れと心の若さで乗り越えられた。

目下、体のあちこちに異常をきたし、数軒の病院通いを続けている。心も同じように老化していると実感している。とても世話役の責任を果たす自信がない。一番の危惧は「自分が楽しくやれる自信がない」ことである。

これからの人生は楽しいことを選んでやろうと心に決めている。ましてや趣味の世界で、マネジメントで苦しむのでは何をやっているか分らない。老化した心と対峙して自問自答。

(2012.01.26 朝日新聞「声」掲載)岩國エッセイサロンより転載

部活を支える

2012-01-24 20:07:23 | ペン&ぺん
 18、19日の両日、鹿児島市に全国の高校運動部の顧問ら約560人が集まり、第46回全国高校体育連盟研究大会が開かれました。大会は全国高体連などが主催し、毎日新聞社が共催させていただきました。
 競技力など3部門で研究発表があり、優秀研究表彰3人には毎日新聞社賞が贈られました。このうち「高校生サッカー選手に必要な基礎体力を総合的に改善するためのボールを利用したトレーニングプログラムの検討」と題し発表した義岡昌明・県立串良商高教諭については20日の本紙鹿児島版で紹介しました。ここで優秀研究発表をもう一つ紹介します。
 その発表は、福井県立鯖江高男子体操部顧問の田野辺満教諭の「体操競技の技術進歩と安全性について~男子高校生の現状と課題」。体操は、けがの多い競技の一つ。近年は高得点を狙おうと能力以上の技に挑戦し、けがをする選手が増えているといいます。
 そこで、10年の沖縄インターハイなどの体操で高難度の技が行われている男子跳馬を検証。予選の全演技を撮影し、技の傾向を分析。さらに高体連の審判員4人が、跳躍の高さや飛距離、回転などを基準に、危険▽不安定▽安定など4段階で評価しました。
 その結果、3%以上が危険、17%以上が不安定な状態で行われている技だと判断されました。中でも「抱え込みツカハラ跳び」は、演技の半数以上が危険または不安定な感じでした。
 田野辺教諭は、事故防止のためには「選手が能力に合った技を飛ぶことが有効。審判や体操協会との連携が必要だ」と発表で結んでいます。
 競技は違いますが、フィギュアスケートでも3回転ジャンプを封印し演技をまとめた方が高得点になることもあります。チャレンジする気持ちを抑えつつ、選手にやる気を出させることも大切な指導法だと感じました。
  鹿児島支局長 馬原浩 2012/1/23 毎日新聞掲載

コクマルガラス

2012-01-24 15:37:44 | はがき随筆
 家の前の電線に黒っぽい鳥たちが群れていた。その中の1羽が「ギュルーギュルー」と鳴きたてている。双眼鏡で見るとコクマルガラスの淡色型だった。ムクドリより少し大きく、頭から胸にかけて白い。冬鳥で、全身黒い暗色型もいる。
 以前にもツルのねぐらの高尾野町の東干拓地で、ミヤマガラスの大軍の中にいるコクマルガラスを見たことがあった。でも鳴き声を聞いたのは初めて。
 うれしくなって、近くにいた人に「珍しい鳥がいますよ。見て」と興奮気味に話しかけた。するとその人は鳥よりも私の方を物珍しそうに見た。
  出水市 清水昌子 2012/1/21 毎日新聞鹿児島版掲載

教え子は先生

2012-01-24 10:37:39 | はがき随筆
 私には過ぎた教え子Yさん。
 3人の子の母で、家業で年中多忙なようだ。だが、音楽会ではいつもよき相談相手。私の拙い作詞曲まで美しいソプラノで歌ってくれる。私は幸せでいっぱいになり、感謝は尽きない。
 昨年の視覚障害者のSさんのコンサートでのこと。Yさんは3曲も歌う出演者だったのに、Sさんの胸に花を飾ってくれた。彼は、にこにこ。うれしそう。私は、はっとし、彼女の優しさに胸を打たれた。主催者の私がすべきことだったのだ。
 Yさん、ありがとう。また、支えてもらった。Yさん、貴女こそ私の先生。
  出水市 小村忍 2012/1/20 毎日新聞鹿児島版掲載

笑って笑って

2012-01-24 10:25:05 | はがき随筆
 母は、まもなく満94歳です。去年は床ずれに悩まされたので今年は夜中にも起きて、体の向きを変えています。そのせいで母はいいのですが、私が風邪をひいてしまいました、
 病院に行くと、なじみの看護師さんとおしゃべりです。
 「あら、お母さんは?」
 「デイに行きました。わたしは病気で母元気。今朝はおむつ交換の時2発たたかれました」
 「1発1000円?」「回数も増えたし、不況だから2発で1000円よ」
 「アハハハ……」
 母の反抗、ドンと来い。私のふところ増えるだけ。
  阿久根市 別枝由井 2012/1/19 毎日新聞鹿児島版掲載

天文台にて

2012-01-23 23:34:15 | はがき随筆
 娘たちと西はりま天文台での観望会に参加した。
 昼間は60㌢の望遠鏡で、こと座のベガ(織姫)が小さくダイヤモンドのように輝くのが見えた。また、すさまじい勢いで繰り返される爆発の紅炎がトゲのように見える太陽とその黒点も見た。
 夜は2㍍のレンズを持つ「なゆた望遠鏡」での観望。アンドロメダ座のアルマクの美しい二重星の色の違い(オレンジ色と薄い水色)や木星、天王星、月などを見せてもらった。
 はるかなる星々をくっきり見ることができて幸せだった。外に出て冬星座を皆で仰いだ。
  霧島市 秋峯いくよ 2012/1/18 毎日新聞鹿児島版掲載

偶然の数字

2012-01-23 23:21:50 | はがき随筆
 去年は11年11月11日の数字にあやかり、婚姻届が多いとの新聞記事があった。私のポンコツ車も平成11年11月11日に購入。理由は記憶しやすい縁起の良い数字だから。私と母は偶然、誕生日が同じ。晩年まで母が得意の五目ずしを作り、一緒に祝ってくれた懐かしい記憶がある。
 もう40年前に年賀はがきをいただいた中に特賞が当たった。県下で2、3人という幸運。いただいた方に焼酎を持参してお礼に行き、喜んでもらった。父は明治40年1月1日生まれ、平成11年1月1日に92歳で終焉を迎えた。人は偶然の数字の巡り合わせの中で生きていく。
  鹿屋市 小幡晋一郎 2012/1/17 毎日新聞鹿児島版掲載

ポインセチア

2012-01-23 23:09:49 | はがき随筆
 あそこにも、ここにも、そこにも――。クリスマスの花ポインセチアが。路地にきれいに咲いている。鉢植えのポインセチアはよく目にしていたが、こんな木だったとは――。
 私の背よりも高い木で、緑の葉を茂らせていたが、いつの間にか真ん中の葉を赤く染めてクリスマスの花になっていた。鮮やかな赤い葉。真ん中につけている赤と黄色の丸い小さな粒々した花もかわいい。
 サンタさんがプレゼントを届けてくれそうな、いいことがたくさんありそうな、そんな気がする。人の心に幸せを運ぶ木、ポインセチア。
  屋久島町 山岡淳子 2012/1/16 毎日新聞鹿児島版掲載

お多福さん

2012-01-23 22:46:41 | はがき随筆
 年の瀬に帰省した次女が、隣の家から小走りで来た姪に「お多福さんみたい」と言って豊かなほおをなでる。叔母からスキンシップされてほほ笑む孫娘。
 孫が2歳半の時、大好きだった父親が突然逝った。父親のそばで寝ていた孫が「パパが起きないの……」と訴える姿に大人たちは泣いた。それから――7年、ヘルパーをする母親と支え合い、強く生きている。
 大晦日、妻が見ている預金通帳をのぞき、残高の少なさに「大丈夫? 私、お年玉はいらないからね」と家計を案じるパパ似の優しい目をしたお多福さんに、妻は笑い、頭をなでた。
  出水市 清田文雄 2012/1/15 毎日新聞鹿児島版掲載

散歩

2012-01-23 22:35:29 | はがき随筆
 夫のお墓まで胸先上りの急な坂。すみれ色の空に張りついた高隈山にさよならして市街地に下る。年明けの街は、どこか白けているので素通りして、実家のお墓までまた胸先上り。
 子どものころ「父さんは土の下になどいない」と祖母に口答えしながら、ワイワイガヤガヤ連れだってのお墓参りは楽しかった。そして、いつしか何かにつけてフラリとお墓まで散歩するのが癖になった。
 かすかに木もれびのさす小暗い墓地を歩いていると心が躍るのはなぜか。墓石に刻まれた懐かしい人々が集まって来る気がする。そのせいかもしれない。
  鹿屋市 伊地知咲子 2012/1/14 毎日新聞鹿児島版掲載

トップ交代

2012-01-17 23:03:48 | ペン&ぺん
 「独善的になったり、社会とかけ離れてはいけない。過去に作り上げた大事なものは残しつつ、改善すべきは改善する」
 12日、九州電力の新社長に就任することが決まった瓜生道明氏が記者会見で語った言葉だ。「やらせメール」問題などで信頼が低下した中でのトップ交代。「(創立から)60年かけてつくりあげた信頼が崩壊したのは、つらい」とも述べ、会見でも厳しいやりとりが続いた。政治献金に関しては「献金は一切せず、不透明な関係はつくらない」と述べている。
 政治や行政との不透明な関係は、どうなっていくのか。新社長就任を受け、玄海原発のある佐賀県の古川康知事は「熟慮された結果だろう。九電として信頼回復に向けた取り組みをしたいということではないか」とコメントした。一方、川内原発がある鹿児島県。伊藤祐一郎知事も「原発再稼働に向け社内の体制を整える一環と理解しており、信頼回復に努めていただきたい」と同様の談話を出した。
 ただし、玄海町民には前社長が取締役に残ることに「看板をかけ直しただけ」「陰の権力が働くことも考えられる」と批判的な意見もある。新社長はトップとしての力量が問われる(引用は13日本紙対社面など)。
   ◇
 中央省庁のトップ交代となる内閣改造が13日、行われた。野田内閣が発足したのは昨年9月。発足直後に鉢呂吉雄・経済産業相が失言の責任をとって辞任。一川保夫・防衛相らが問責決議されるなどして内閣改造にいたった。
 野田首相は地味ながら落ち着いたイメージだったが、内閣発足半年足らずの改造で、その内閣の動きには落ち着きが感じられない。消費税アップという大きな課題を掲げるならば、じっくり落ち着いた中で、内容のある議論が必要だろう。
 こちらも、トップの力量が問われている。
鹿児島支局長 馬原 浩 2012/1/15毎日新聞掲載

ぶっゴマ

2012-01-17 22:43:27 | はがき随筆
 冬になるとよくコマ回しをした。コマは自分で作ったもので直径5㌢ほどの丸太の端を円錐形に削り、8㌢ほどの長さに切り、切り口にクレヨンで渦巻き状に色を塗ったコマだった。長さ30㌢ほどの棒の先に、細く裂いた布を7本ぐらいくくりつけたハタキ状の物でコマをぶって回すのだ。「ぶっゴマ」と呼んで一日中回して遊んでいた。回し方は両手で回してぶって回すが、倒れかかるとコマは少し吹き飛んで周り続けた。
 寒さに震えながら、白い息を吐き、真っ赤な手をして遊んでいた冬を思い出す。
  出水市高尾野町 畠中大喜 2012/1/10 毎日新聞鹿児島版掲載

マイ骨壺

2012-01-17 22:34:53 | はがき随筆
 昨秋、母や妹たちと家族旅行した。行き先は佐賀県有田と嬉野温泉。陶器店が軒を連ねる有田焼卸団地で、食器を探していた母のハートを射止めたのは骨壺。白地に、それはそれは見事な桜が描かれており、床の間に飾ってもおかしくない壺だ。
 父が他界した時、葬儀社の用意した骨壺がありきたりの物だった。焼き物が大好きな父だったのにと思うと、そのことが心残りだった。お気に入りのマイ骨壺が準備できて母は、ほっとしているらしい。知人が来ると桐箱から出して、うれしそうに披露する母を見て、私も好みの柄で注文しようと決めた。
  鹿児島市 種子田真理 2012/1/13 毎日新聞鹿児島版掲載

いのち見つめて

2012-01-17 22:25:33 | はがき随筆
 大半が仏教徒の日本人には関係ないように思えるが、お祭りと思っているのか、子供も大人も大騒ぎする。そのクリスマスが済んで今年も残りわずか。
 世の中は騒然としていて辰の年もあまり幸せは望めそうにない。この4.5日体調が悪く仕事を休んで寝ていた。85歳の老体にとって一人で開業医を勤めるのは酷なのかもしれない。
 一人で寝ていると、さまざまなことを考えてしまうが、生涯現役を誓ったから最後まで頑張りたい。戦争で失ったはずの命だから、ここまで生きたことは幸運だったと思わねばなるまい。
  志布志市 小村豊一郎 2012/1/12 毎日新聞鹿児島版掲載

怠けない

2012-01-17 22:05:56 | はがき随筆
 菜園の隅にカラーを植えた。夏、清楚な純白の花が咲き、殖やしたいと思った。ところが数日後、つややかな葉は黒い大きな幼虫に根元まで食われ、消えてしまった。ところが、翌春、芽を出した。葉が伸び花を期待したが、またもセスジスズメの幼虫のようだ。1.2日で葉を食いつぶされてしまった。無農薬で栽培する菜園に防虫対策を怠け、三度も繰り返し、カラーのくじけない強さに驚いた。
 先日、霜よけにかぶせた落葉をそっと分けて見たら根元は固かった。今年はきっと咲かせよう。年だからとくじけないで怠けないことを念頭に誓った。
 出水市 年神貞子 2012/1/12 毎日新聞鹿児島版掲載