川崎市の多摩川河川敷で中学1年、上村遼太さん(13)の刺殺体が見つかった事件。顔見知りの少年らが逮捕され、全容解明に向け動きだした。上村さんは年上がいるグループに入ったものの、友人に「抜けたい」と漏らしていたという。テレビで流れた目の周りの青あざ、それと屈託のない笑顔のギャップに、誰もが「この少年にいったい何があったのか」と思っただろう。私は柔道の選手だったので、相手の肘などが顔面に当たり、あざができたのを覚えている。私の経験からテレビで見たあざは、相当強く殴られているようだ。
多くの人が「10代の若者は、友人や年上の者に生活態度や学習、物の考え方が大きく左右される」と思っているはずだ。少年時代の私の友だちにもいた。まだ自分自身の物事に対する考えや善悪の判断、人生の目標が定まっていないかもしれない。社会への反発、欲求不満があるのも分かる。
「ガラスの○○」などとガラスのようにもろく、壊れやすい10代の若者の気持ち、葛藤をテーマにしたヒット曲も多い。一方、親や周囲も彼らに気を使い、なるべく波風立てず、10代を過ぎてほしいと願う。できれば運動や文化系の部活に専念して。明るくたくましく成長してほしい。これって、私だけの考えか。
テレビや新聞各紙にるよと、上村さんから苦悩や危機のシグナルは出ていたようだ。暴力を振るわれていた13歳を救えなかったのが悔やまれる。いじめも暴力も殺人も、許されるわけがない。
本紙社説「遼太さんの死 大人たちが問われる」(1日付)を読まれましたか。私も暴力やいじめは学校や家庭、行政が総がかりで対応しなければ解決できないと思う。今回の事件を教訓に、私を含め親も人ごととせずに鹿児島全体で地域の目としてあらゆる知恵を出し、近所の子供たちを守っていきたい。
鹿児島市局長 三嶋祐一郎 2015/3/3 毎日新聞鹿児島版掲載