貧乏な教師の息子だった。友と悪戦苦闘の末、里山の頂上を極めた。母親の握飯を頬張った。美味しかった。
下山の途中、大根畑の農家の老夫婦に呼び止められ、大根を一本頂いた。結構大きな立派な大根だった。子供には重かった。
帰宅し、引込思案の僕は黙って大根を差し出すと、母親は不動明王の如く
「返して来なさい」
と激怒した。
剣幕に怯え、大根を抱え泣きながら飛び出した。友の国鉄職員の家に行き、事情を説明したら母親は笑顔で大根を受け取った。しばし友と野球をして遊んだ。
夕焼けを浴び家に戻り、夕食を食べた。母親は大根があると豪華な味噌汁になったと薄給の父親を非難している。親父は黙して語らず、僕は沈黙して食事を頂いた。
マークをクリックして投票頂くとランクアップしますので、一手間頂けると幸甚です。
最新の画像[もっと見る]