風来坊参男坊

思い付くまま、気が向くまま、記述する雑文。好奇心は若さの秘訣。退屈なら屁理屈が心の良薬。

朱鷺が日本の空を舞う 372号

2008年09月30日 10時56分56秒 | 随想
朱鷺は、Nipponia nipponの学名で、日本国の特別天然記念物であったが2003年に野生絶滅した。

1998年に江沢民国家主席の友好の贈答品である一対の朱鷺(友友と洋洋)が増殖し、2008年には、佐渡朱鷺保護センター野生復帰ステーションで110羽が飼育されている。25日に10羽の朱鷺が試験放鳥され、27年ぶりに佐渡の大空を飛翔した。

中国のほぼ中央に位置する陝西省で、1981年に7羽の野生朱鷺が発見されて以来、保護区域を設定して環境整備に懸命に努力し、2002年には約200羽に達した。

戦後の西洋科学主義で驚異的な発展を継続した経済大国日本は転換期に来ている。その時期に兵庫県豊岡でコウノトリが、新潟県佐渡で朱鷺が野生に帰っていく。物欲の終着駅に到着した今、東洋自然主義の列車に乗り、始発駅を発車する時刻が到来した。

経済発展による財政力で不可能はないとする現代の世相は錯覚である。財政力で中東諸国から購入した石油を原料として、西洋科学の知識で大量の農薬を製造散布して、米を食い荒らす害虫を殺害する行為が、コウノトリや朱鷺の餌を奪うことになり、食物連鎖で絶滅に追い込んだ。必要最低限の農薬に頼る安全な食料を生産する地味な農家の長期間にわたる献身的な活動が「種の多様性」を復活する。

高層建築の林立する街をパトカーや救急車がサイレンを鳴らして頻繁に通過する過密人口の喧騒の都会。鳥達が鳴かなくなった沈黙の春の田舎道を高級自動車が爆音を轟かして通過する。限界集落の街角から老人が黙って見ている。豊かな日本なのだろうか?

田舎道で老人が若い農夫と世間話をしている。童謡を口ずさみながら小学生が歩いている。赤子を背負った農婦がお婆さんと世間話をしながら川で洗濯をしている。近所の農家の縁側では満開の桜を見ながら、魚の行商人の小母さんと漬物を食べながらお茶を飲んで雑談している。小鳥がさえずり、コウノトリが空を舞い、朱鷺が水田で餌を啄ばんでいる。爽やかな春風が心地良い。

食料調達が仕事、日出起床・日没就寝の3世代同居の大家族、狭いながらも楽しい我が家、助け合いの近所付合い、自然と同化した古き善き日本の原風景である。

非効率で過酷な農業・漁業・林業の1次産業が振興され、若者が集まると懐かしい日本人の心が復活するのである。朱鷺が、コウノトリが寄ってくる。

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