人間の善は阿弥陀様の悪 ３２９号

シャーウッドの森に住むロビンフッド。「石川の浜の真砂は尽きるとも世に悪人の種は尽きまじ」とうそぶく石川五右衛門。赤い風車のついた棒手裏剣の風車の弥七。そしてご存知の鼠小僧。義賊と言われた人間である。

義賊とは、社会的弱者救済の為に、社会悪を実践する無法者を後の世の人が懐かしく思い出して語る尊称である。略奪品をマネーロンダリングしないで、貧者に分け与えた。

盗賊と義賊の分水嶺は、人間性の違いである。自己中の我利我利亡者が盗賊で、他人を救済する事に喜びを見出す仏心が有る盗賊が義賊である。

そして舞台は、人間に極端な格差があり、僅かな人間に富と権力が集中し、多くの民が苦しむ社会である。そこに勧善懲悪のドラマが成立し、新たな社会悪が浮き彫りになる。

忠臣蔵。江戸時代の元禄１４年２月４日、赤穂藩藩主・浅野長矩が幕府の教育係の吉良義央に徹底的にいじめられる。いじめの動機は贈賄がなく、収賄罪が成立しないからである。

平和ボケが、吉良の殿様を狂わせた。教育を放棄し、物欲の鬼にする。堪忍袋の緒が切れた浅野内匠頭は江戸城松の廊下で刃傷沙汰。喧嘩両成敗が世の常識であるが、赤穂の殿様はトカゲの尻尾切で切腹。

忠臣の大石内蔵助は元禄１５年１２月１４日の本所・吉良邸への討ち入り、殿の無念を晴らす。４７名の集団による殺人罪である。

水戸黄門。佐々木助三郎と渥美格之進の旅姿３人男。風車の弥七やうっかり八兵衛そしてお銀が援護する。平民を苦しめる悪代官の公邸で刃傷沙汰。「控え居ろう! この紋所が目に入らぬか」。そして自殺強要罪の切腹を申し渡す。

清水次郎長一家の大政・小政と森の石松。ディック・ミネが唄う旅姿３人男は悪徳やくざを切り殺す。毒をもって毒を制す。これで小市民は平和に暮らせる。

極楽浄土の阿弥陀様は人間集団の善悪の判断は全て悪であると言う。自分を徹底的に殺して他人に奉仕する苦しみの人生が禅・善だという。混乱した私は全てを阿弥陀様にお任せして、懸命に生きる以外に方法が見つからない。オン・アミリタ・テイ・ゼイ・カラ・ウン。