恒例の高齢者の援農ボランティア ３９１号

１１月２日から５日間、伊藤蘭ちゃんが案内する「人生の楽園」のテレビ番組で全国的知名度を獲得した飯田市プロジェクトのワーキング・ホリディーに参加した。当初は野次馬的動機で参加した人間が虜になり、自然相手の農業に魅せられるリピーターが多い様である。世間の常識人の異端児の私は１５回目の援農中毒患者である。

過去２年は数回訪れたが、今年は四国遍路旅に浮気してたった３回目である。しかし定宿の座光寺篠田農園の主人は過去３年の実績を踏まえ破格の配慮をしてくれる。

今の時期は市田柿の皮むきの最盛期である。皮むきロボット「ムッキー」の操作経験者として、主人は私を指名する。その信頼に答えなければ男と言えない。

ロボットの円盤の穴に柿を置く単純作業を延べ８時間繰り返すと１０００ｋｇの柿の皮むきが終了する。紐に吊るし乾燥したドライフルーツの市田柿の製品は２５０ｋｇになる。

９４年ぶりに記録更新した富士山初冠雪の８月９日の局所的雹害で、不良の柿が混じっている。しかし大規模農家の篠田農園は、柿畑が市内の広域に分散していた事と大豊作の為に被害を回避できた。効率を重視した一極集中の柿畑は壊滅的打撃を受けた。危険に対する分散は重要な思想である。

主人は仕事の任務を厳しく管理することは無いが、自分で自分にノルマを課すことが大切で、ボランティア活動の醍醐味である。

若者が先祖伝来の田畑を見限り、都会に流失する原因は市場原理の自由経済体制である。相場の競争原理の価格決定は農村を破壊した。国による圃場整備や道路網や下水道のインフラの向上は農家の助けに成らず負担が増加する。潤うのは農業土木の企業である。

国による農産物の価格保障が農村再生の薬である。農家が潤うと若者が田舎に戻り、活発な農作業が税を増収させ、その金でインフラが整備される。現状は本末転倒している。

国の安全保障は経済力だろうが、国民の安全保障は食の自給率の向上である。

家庭の経済を過酷な労働で支えて定年を迎えた高齢者は稼ぎが少ないので、家族から濡れ落ち葉や粗大ゴミと罵られ、居場所が無い。好きな仕事を自由気侭に楽しめる援農ボランティアは哀れな老人の最後の砦だから恒例になる。賃金を得る労働なら辛すぎて継続しない。

農家が無くなり援農ボランティアが不可能なら、四国遍路旅に出ることになる。