さて、韓国の有機農業を支えている3つめが、生協の活動の中心に有機農業があるという点です。
日本の生協と異なり、韓国の本格的な生協運動は1980年代後半から90年代前半にかけて始まります。この時期に、ハンサルリム、iCOOP、トゥレ生協の3大生協が、農村の生産者と都市の消費者を結ぶ、いわゆる産直運動として始まるわけですが、このとき有機農業で作った農産物の供給が活動の柱となります。これには、慣行農業への不信が背景にあり、また自然との共存や調和をめざす有機農業の考え方が受け入れられたからだと思います。このように生協と手を組んだ韓国の有機農業は、安定した供給ルートが確保されることで、いっそう拡大していくわけです。 また、学校給食などで有機農業の農産物が使われているのも、有機農業を支える大きな柱の一つです。韓国の給食はご飯が中心なので、米、お汁の具に使う野菜、キムチなどで有機野菜を使うケースが増えました。これは、都市周辺の農家にとっては安定した大きな収入源になっています。
研修施設での給食。ここでも有機野菜が使われています。黒っぽいソースは韓国風中華料理で使われるジャジャンソース。ハヤシライスじゃありませよ。
最後に有機農業を基盤にして地域作りに成功した事例を紹介します。すでにこのブログで何回か書いていますが、忠清南道のホンソンという地域では、有機農業、農業高校、協同組合が三位一体となって地域づくりが行なわれていて、韓国全土から見学者が来る観光地にもなっています。このホンソンについては、以前、このブログでかいた記事がありますので、ご覧になってください。
洪城(ホンソン)と南楊州(ナムヤンジュ) その1 その2 その3
また、ここでは稲作が盛んですが、田んぼの生きもの調査も定期的に行なわれ、農村と都市をむずぶ運動になっているのは日本と同じです。いままで、日韓の田んぼの生きもの調査の交流会が行なわれてきましたが、ホンソンでも今まで2回、開催されました。
2011年の生きもの調査の呼びかけ
では、今まで撮った写真で、ホンソンの様子を紹介しましょう。
ホンソンの中心、プルム生協の建物。売店とパン工場があります。
売店の中。日本の生協と違い農産物とその加工品中心です。無人で運営しています。

プルム学校生活協同組合の看板。後ろの建物が古本屋と出版社の編集室。

その向かい側にある図書館。多くの市民の募金で作られました。

ムンダンリにある研修施設。会議や食事、宿泊もできます。週末は全国から多くの人たちが見学に来てここで食事をするので、この地域の現金収入の柱の一つになっています。

日本からも見学に来ます。農業関係の公務員の視察を案内しました。


このビニールハウスは若い帰農希望者のための組合が共同運営しているもの。おもに葉っぱ物の野菜を栽培し、帰農希望者に農業を実践しながら教えています。

研修施設の隣にある博物館。農機具など伝統的な民具が展示されています。

20棟ほどある一戸建ての住宅。農家以外にも公務員や芸術家、教師などが住んでいるそうです。土地投機ができないように、土地は共有(20分の1というぐあいに)になっているそうです。

ホンソンに本部のある<正農会>のチラシ。韓国の有機農業の中心団体の一つです。
このように有機農業を柱にしたホンソンの地域づくりは、農業で食べていける仕組みをつくり、農業高校でも実践中心の教育を行い(全寮制です)、若い人たちが農家として地域に定着できる状況を作り出しています。韓国全土から見学に来るのも肯けます。ぜひ、ホンソンを訪問して、目で見て、体で感じてください。僕もいままでに10回以上行っていますが、行くたびに新しい発見がありますので、皆さんも僕が見つけていないホンソンの秘密や魅力を発見してください。