韓国の有機農業の歴史を紐解くと、1975年に日本の愛農会の小谷純一先生の韓国訪問をきっかけにして、ホンソンとナムヤンジュで始まったと言います。11月の下旬から12月の上旬にかけて、このホンソンとナムヤンジュの両方を案内する機会があり、韓国の有機農業の実態に触れ、これからの農業のあり方や地域のあり方を考える、とてもいい機会になりました。これから、何回か思いついたことを書いてみます。
秋田から来た今野さんと三浦さん(ホンソンのマッコリ工場で)
佐渡農協の皆さん(料理実習施設、モコチトで)
まず、共通していることは人材を育成する施設・機関がとてもしっかりしているということです。ホンソンの場合は<プルム農業高校&専門課程>、ナムヤンジュの場合は<農業技術センター>が地域で農業を担っていく人材を絶え間なく供給しているという点が、とても印象的でした。
<プルム農業高校>では1年が園芸と野菜、2年が稲作、3年が牧畜(だったと思います)の実習があり、また短大レベル(2年制)の<専門課程>でより本格的に農業実習をしていて、卒業後はすぐに生産者として自立できるような教育が行われています。高校からは毎年30名近くの卒業生が出るわけで、彼ら・彼女らのかなりの数がホンソン地域に定着するわけで、20代30代の農家だけで10名以上いるのも納得できます。
また、これらの教育や栽培技術を支える研究機関が設置されているのも、強みですね。
ナムヤンジュの場合は<農業技術センター>の働きがとても大きいですが、教育機関としてもきちんと機能して、結果を出しているところがすごいです。佐渡農協の人たちとナムヤンジュのパルダン地区にある体験農場を訪問しましたが、その<社長>さん(女性です)は30年以上<農業技術センター>と関係があり、イチゴの有機栽培や経営の方法など、さまざまな勉強を<農業技術センター>でしたそうです。
料理体験施設のモコチトのシン代表(こちらも女性)も、<農業技術センター>にある<生活改善委員会>や料理教室の受講生たちが作っている<郷土料理研究会>の中心メンバーです。モコチトの料理も<郷土料理研究会>のメニュー開発の活動の中から生まれてきたと言えるでしょう。
日本でも同じですが、<農業高校>という名前は人気がないのにも関わらす、<プルム農業高校>と堂々と<農業>を名乗っています。たしか、佐渡の農業高校も名前が変わったのじゃありませんか?
一方の<農業技術センター>、こちらはいろいろなことを教えてくれます。農業指導や栽培技術の研修だけでなく、料理実習、パン・ケーキ実習、IT実習、経営教育など多岐多彩にわたっています。僕もキムチ実習やパン作り実習を受講したことがありますよ。また、1年課程(週4時間)の<グリーン大学>も実施されていて、すでに500名以上の卒業生がいるそうです。
ナムヤンジュ農業技術センターの展示を見学する佐渡の皆さん
次に注目すべきは、消費者との直接のつながりがあることです。ホンソンの場合は生協の組合員ですし、ナムヤンジュの体験農場の場合は各地の学校や幼稚園などの固定客です。これらの消費者のおかげで市場の変動にも左右されませんし、また海外から安い農産物が入ってきても、ほとんど影響がないでしょう。米韓のFTAなど、まったく関係ないと、体験農場の方は言っていました。(続きます)