韓国雑記帳~韓国草の根塾&日韓環境情報センター&ジャパンフィルムプロジェクトブログ

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生物多様性を育む農業国際会議(ICEBA)2018での宣言文

2018-08-02 17:19:33 | 環境問題&有機農業

こんかいの<生物多様性を育む農業国際会議>は、いくつかの点で画期的なとことがあったと評価できます。一言でまとめれば、現場と地域との結びつきを意識した会議だったと思います。具体的には別のところで書こうと思いますが、まず会議の宣言文を紹介します。

第5回生物の多様性を育む農業国際会議(2018年7月20~22日 開催地:日本国千葉県いすみ市)

 

いすみ宣言「里山里海を守る生物の多様性を育む農業」

 

日本、大韓民国、ブータン王国、フィリピン共和国から千葉県いすみ市における第5回生物の多様性を育む農業国際会議(ICEBA)に集った私たちは、この3日間の会議を通して、改めて生物多様性を育む農業(以下、「生物多様性農業」と呼ぶ。)が私たちの世界を持続可能なものにしていくために最も重要な施策の一つであることを確認しました。2010年兵庫県豊岡市で第1回ICEBAが開催された当時、生物多様性農業とは一度野生で絶滅したコウノトリやトキなどを野生復帰させるために必要な農業として理解されていました。今回、里山と里海が有機的に結ばれているいすみ市を体感し、その中で語り合った私たちは、自然と無数の生きものたちを支えていくためには生物多様性農業が重要であることを実感することができました。いすみ生物多様性戦略でも強調されているように、里山里海は資源循環型社会の重要なモデルの一つです。生物多様性農業の普及による里山里海の自然と環境の維持は、持続可能な世界を実現する土台となります。

この生物多様性農業の普及推進を目指す私たちは、生物多様性を基盤とした地域資源循環型の農業技術の確立とその国内および国際的な普及の実現を最終目標として、その達成のために、5つの具体的目標を定めました。

  目標1:持続可能な農業の基盤として生物多様性が果たしているメカニズムの解明

  目標2:近代農業によって姿を消した生きものを復活させる農法への転換

目標3:生物の多様性を育む圃場管理に取り組む農業者の育成

目標4:地域の風土やコミュニティに根差した循環型農業システムの構築

  目標5:生物の多様性を育む農業による安全・安心な農作物の安定供給 

私たちは、この5つの目標を念頭に置きながら、全体会議、分科会を通して具体的な課題について議論を重ねました。その結果を踏まえ、里山里海に恵まれたこの地「いすみ市」を冠した「いすみ宣言」として、以下の通り宣言します。

1 里山里海に生存する多様な生物資源や脱脂大豆などを土着微生物で発酵させて土づくりや肥培管理に活用する技術や「イネ―麦・なたね―大豆」などの有機輪作技術は、収穫量や栄養成分、コストなどで化学肥料に比べより大きな効果を生み出します。特に水田では土着微生物を活性化させる脱脂大豆に低投入・高収量の効果が認められ、これらの技術を駆使して化学肥料と農薬の汚染からアジアの水田農業を守らなければなりません。また、生物の多様性の基盤であるミジンコやユスリカにダメージを与え、生態系を破壊する長期残効型農薬は、カメムシなど耐性害虫の異常発生を促す要因になっている疑いがあり、直ちにその使用を中止し、地域ぐるみの環境創造型農業、さらには有機農業への転換を呼びかけます。

2 ICEBAがめざす生物多様性を基盤とした農業技術がどこまで実現されたのかを解明・評価する手法として田んぼの生きもの調査は必要不可欠です。現在様々な方法で行われている生きもの調査のそれぞれの特性と役割を踏まえつつ、生きもの調査関係者の連携と協力によって、生物多様性の力を最大限活用する農法の可視化に取り組みます。

3 学校給食における地元産有機米の100%使用という画期的成果を挙げたいすみ市のプロセスを共有し、全国の市町村で有機米の導入を可能にしていくためには、各地での経験を活かしつつ、「子どものために」という想いをもった行政・学校・農業者間での負担を分かち合った協働が求められます。学校給食100%地元産有機米化の取り組みをはじめることによって、新規就農者の増加を含めた地域資源循環型社会の発展と地域づくりの展望を開きます。

4 野生で絶滅したコウノトリやトキ、ミヤコタナゴやシギ・チドリ類などの現在絶滅の恐れがある多くの生きものたちの生息保全には、様々な生きものが生息する水路や水田での湿地環境の復元が欠かせません。絶滅危惧種の保全と野生復帰のために、普通種も含めた多くの生きものが住みやすい水田環境の復元活動とその活動を支える法的・社会的な仕組みづくりを推進します。

5 生物多様性農業を普及推進し、農業分野、ひいては社会全体における生物多様性の主流化を実現するためには、農林水産省、環境省及び国土交通省等の政府機関を含め、森里川海の言葉が象徴する、河川上流から下流までの関係する多様な主体による流域のネットワークの形成が鍵となります。広範なネットワーク形成とともに生物多様性農業が市場において経済面で高く評価される取り組みの強化を図ります。

 

2018年7月22日 

第5回生物の多様性を育む農業国際会議参加者一同