梅雨入りしてから雨降りでも苦にならずに歩ける山を色々とピックアップしていた。
その内のひとつに工石山を挙げていた。工石山なら雨が降っていても青少年の家の
体育館の建屋の下の駐車場で、雨を気にせず雨具を着こめるし、下山後も着替えが
出来る。登山道はよく整備されているので雨降りでも安全に歩ける。そんな感じで
候補の一つと考えてYAMAPを見ていると、昨年のこの時期の活動日記には
タキユリの写真が上がっていた。ただ最初はタキユリは工石山の登山道のどこかに
咲いているのだと思っていたら、どうやら山中ではなく、高知市内からの県道16号線
沿いに咲いていることが分かった。そこで昨年の活動日記を書いていたギッチャンさんに
『県道のどの辺りに咲いていますか?』と尋ねると、タキユリは探すほどの事はなく、
高川あたりの県道沿い沢山咲いていると教えて頂いた。
さらにプラスして七ツ淵神社のウスキキヌガサダケも是非見に行ってとお勧めされた。
『タキユリはまだ蕾ばかりですよ』と教えてもらったが、来週、再来週と予定が
入っていて出かけられるのは今週しかない。今年はどこの山でも花の開花が早い。
ひょっとしたら一輪でも咲いていたらラッキー!くらいの気持ちで出かける事にした。
当初は工石山ではなく、地形図には山名が記載されていない高知の三つ目の
笹ケ峰を歩こうと奥様たちと連絡を取り合っていたが、急遽ルリちゃんが参加
出来なくなった。せっかくなら未登の山。三人で歩く事にしてコース変更。
するとあっちゃんから『黒滝峰の岩場を登りたい!』とメッセージが届いた。
私が黒滝峰への直登ルートには岩場にロープがかかっていて、楽しいよ!と
前々から話をしていたので、いつかは登ってみたいと思っていたらしい。
ではでは直登ルートを登って三辻山へ歩いて、その後は花散策ということで!
高速を大豊ICで下りるまでは山にはガスがかかっていたが、国道439号線から
県道16号線を南下して赤良木トンネルの手前では青空が広がっていた。
予定通り青少年の家に車を停めて、まずは県道を南に下って行く。
途中、少し霞んではいたが南に太平洋まで見える眺望が広がっていた。
木々の上にちょこんと頭を出した黒滝峰の岩峰。山手には伐採地の作業道への入り口。
最初のヘヤピンカーブが三辻山・黒滝峰への登山口となる。
小滝の手前で左に折れて急登を登って行く。以前にはなかった矢印の道標が何ヵ所で
建っていたが、目印は以前からあった色褪せてはいるが白と赤のテープ。
前日の雨で湿った斜面を足を滑らさないように登って行く。時々現れる大岩は右に
右にと巻いて行く。この山域で見られるレンガ色の石。白い筋が入っているのが
大トロの様に見えるのは私だけかな?
すると最初の岩壁が現れる。ここも右へと巻いて行くと、岩の隙間に根を張り、
途中から真直ぐに高く伸びている『ド根性の木』。『ド根性の植物』と言われて、
アスファルトの隙間から生える植物や野菜はよく目にするが、ここまで大きく
育った木は珍しい。
この岩壁を巻いて上部に出る途中で前を歩くあっちゃんから何やら匂って来た。
岩壁の上部に出たところで『あっちゃん、今日のお昼は冷やしうどん?』と尋ねたら、
『そうよ!』と。『ひょっとしたら出汁が漏れてないですか?』と言うと、ザックを
降ろして中を見るあっちゃん。予想通りタッパに入れたうどんの出汁が漏れていた。
あっちゃんがザックの中身を取り出しゴゾゴゾしている間に、ふと横を見ると木々の間から
見晴らしが良さそうな岩が見えた。枝葉を掻き分け岩場に出て見ると南に太平洋から
浦戸湾の景色が広がっていた。怪我はしていないが怪我の功名。あっちゃんが立ち止まった
お陰で、前回は気づかなかった展望岩で絶景を見ることができた。
ザックの中身を片付けたあっちゃんも展望岩でひとしきり写真撮影。その後歩き始めると
さらに高い岩壁が現れた。岩の足元の土だまりを右にどんどん進んで行くが、前回はあった
はずのロープが見当たらない。仕方がないので引き返して二人で右往左往しながら、
『そっちはどう?』『こっちは何とか登れそうや!』などと言いながら、木が生えた
岩の隙間を狙って適当に登って行く。少し藪ぽい岩崖を木の枝を握り、潜りながら
登って行くと(この間は写真を撮る余裕が全くなかった)、何とか岩壁の上部に
たどり着くと、ここでも南側の眺望が広がっていた。
ここからは赤良木峠から樫山峠へのトラバース道まで直登。足元は踏み跡も無く
不明瞭だが、テープを探しながら何とか登って行くとトラバース道に出た。
トラバース道に出た後一旦赤良木峠の方へ左に折れて歩いて行く。しばらく歩いて行くと
道の両側にテープが垂れ下がっている。ここから山側に登って行けば黒滝峰の直下になる。
ここからもテープを目印に登って行くと目の前に巨大な岩壁が現れる。
ここでも先ほどの岩壁と同じように岩の下を右に巻いて歩いて行く。岩壁の下に白赤の
テープは続いているが、どうやらこのまま岩壁を巻いて上部に出るルートの様だ。
お目当てのロープ場に行けなくなると気づいて、引き返して太い白テープのある
場所から登って行く。
最初は岩と岩の間の隙間の様な場所。少しロープを使って登って行くと、最後の岩場には
太い白と茶色のロープが掛かっている。
白骨樹に括り付けられたロープは真ん中あたりで輪っかにしてアブミのように
なっているが、段差が結構あってここで少しあっちゃんがてこずる。
それでも何とかこの場所をクリアすると、あとはグイグイと登って行った。
この岸壁は固く脆くもなく足がかりがしっかりしているので、見た目よりは簡単に登れる。
ロープが途切れる最上部からは少し籔いた灌木の中を進んで行くと黒滝峰の岩峰の
手前にでた。尾根からは左に折れて黒滝峰の岩峰の突端にでる。
ここからも先ほどまでの展望岩と同じように南の景色が広がっていた。標高が上がった分、
先ほどまでの岩峰展望台では見えなかった浦戸湾に隣接する五台山も見えた。
さらに右手には工石山と青少年の家、そして緑の山肌が大きく地肌になった伐採地が見える。
するとあっちゃんが初めてこの景色を見たと言う。『いえいえ2年前にルリちゃんと
ちゃんと来ていますよ!』
展望岩での絶景を楽しんだ後、黒滝峰の標高点を踏んで三辻山へと歩いて行く。
赤良木峠と三辻山との分岐にある東屋を指して、『これは見覚えがあるでしょう!』と
言っても『こんな東屋、どこにでもあるし!』と返事が返ってきた。それにしても
奥様たち二人は意外と山での記憶があまりない。
ヤマシグレ
さすがに三辻山山頂の丸い山名案内板は見覚えがあるらしく、『ハイハイ、ここは来ました』と。
青空の下、日差しはきついが吹く風は乾いていて心地よい。
時間はまだ10時30分過ぎなのにあっちゃんがここでお昼ご飯にしようと言う。
兎に角タッパから漏れたうどんの出汁が気になるらしい。『過去最速のお昼ご飯ですね』と
言いながら、コンビニで買ったヘルシー巻きずしを取り出す。
山頂からでの眺望はやはり霞がかかっていて、北側の峰々の山座の同定は難しい。
食後はコーヒーでまったり時間を過ごし、記念写真を撮った後一旦東屋のある分岐まで
下って、赤良木峠を目指す。山頂の下を巻くようにして続いていた道が杉林の中の道になると
傾斜も急になり九十九折れの道になる。足元に今日三匹目の登山靴より大きいヤマミミズ!
途中でテープのある分岐らしいヶ所があり最初は右に下って行ったが、どうやらルートから
外れている様子だったので、ルートの左の道へと斜面を登って行く。(実はこの分岐から
右の道が、伐採地を通らずに赤良木峠に行ける道だとあとで分かった。)
すると以前からのルートは途切れてしまい伐採地の中に入っていった。
ここでGPSを確認して見ると、すぐ下に林道の実線がある。その距離もさほどでも
ないので、作業道の行止りから林道めがけて降りて行く。少し笹が藪いてはいるものの
そこはあっちゃん手慣れたもの、躊躇なくどんどん下って行く。
すると三辻山の道標の立つ場所に出た。そしてその先には前回来た時、杖塚から樫山峠に
行こうとしたが、ロープが張られて通行止めの標示のあって引き返した場所に出た。
ここからは赤良木峠を通って杖塚経由で青少年の家へと戻って行く。
ウツボグサ
コナスビ
登山口を過ぎ青少年の家への舗装路を下る途中で見えた伐採地は、黒滝峰の直下まで迫っていた。
樫山峠から三辻山を経由して工石山というメジャーなルートが、もう歩けなくなったのが
とても残念だが、恐らく三辻山から伐採地との間にあった分岐から赤良木峠への迂回路が
これからは利用されることになるのだろう。
ヒメシャラ
青少年の家の横の県道沿いには今は盛りに色とりどりのアジサイが咲き誇っていた。
建屋の下の駐車場では四国森林管理局の方がお昼休みをとっていた。しばらくして車から
出てきた方と話をしていると、どうやら伐採地は民地の様で、登山道はそんな中を
通っていたので、通行止めは仕方がないとの事だった。ついでに今日の黒滝峰の岩場の
話をすると、その方はそのルートの事を知らず、『登山道以外の所を歩くのは危険です』と
お小言を頂いた。何度も言うので『ハ~イ分かりました』軽くいなして車に乗り込んだ。
ここからはギッチャンさんに教えてもらった花散策。県道を南に下って行くと何ヵ所かの
道路の脇の法面に、花を咲かせたタキユリが見えた。『もっと下がって行ったら沢山咲いて
いるわよ』とあっちゃんが言うのでどんどん南下していくが、タキユリは見つけられず、
そのうちに『ネットのある場所には色々な花が咲いているわ』とギッチャンさんが教えて
くれた場所に着いた。そこに咲いていた花たち!
オオキツネノカミソリ
ギボウシ
??
バイカアマチャ
そこで何枚か写真を撮った後、七ツ淵神社へと向かう。県道から標識に従って車を走らせると、
鳥居の前に二台程車が停まっていた。鳥居の場所から少し上に車を停めて、鳥居の脇から
参道を降って行くと直ぐにお目当てのウスキキヌガサダケを見つけることができた。
ただギッチャンさんがアップしていたフランス宮廷の女性が着るドレスのような形ではなく、
少し萎んで形が崩れたスカートになっていた。そしてその先には完全にそのドレスを脱ぎ
捨て寂しそうに立つ女性の姿があった。
道はどんどん下っている。この先に神社があるのだろうかと思いながら歩いていると、
女性が独り屈んで写真を撮っていた。『何か咲いているのですか?』と尋ねると
『私も初めて見るコクランです!』と教えてくれた。花がとても好きそうで、ここにも
何度も来ている方が初めて見たというのなら珍しいのだろうが、花音痴にはその希少価値も
分からない。するとその女性がキヌガサダケがどんどん萎むんでいく動画を見せてくれた。
その方の説明によると明け方に黄色い菌網を広げその日のうちに姿を消してしまうそうだ。
綺麗なドレスをまとった貴婦人が何とも儚いな~とあっちゃん。
七ツ淵神社は車を停めた場所からかなり下の谷底の様な場所にあった。ここまでは下る
一方だったがすでに額に大汗を掻いていた。境内にはまだ硬い蕾のタキユリと花を散らし
始めたナツツバキ。
神社からの帰り道。今度は登りの一辺倒。青少年の家でせっかく着替えたシャツが
汗でびっしょりになった。車に乗り込みエアコンを全開に。『ここから南にいっても
タキユリが咲いてそうな雰囲気がしないので、さっき見かけた場所まで戻りましょう』と
話をして引き返す。高川の集落に差し掛かる所で、低い位置に咲いているタキユリが
目についた。早速車を停めて撮影会。白い花びらに薄いピンクのグラデーションと
赤い小さな斑点。斜面から垂れ下がった茎に上に向かって反り返った花弁が、
何とも優雅でそして可憐で見惚れてしまう。
黒滝峰の岩場・タキユリそしてウスキキヌガサダケの三点セットの今日の目的を完了。
『ご満足いただけましたか?』とあっちゃんに問うと、ニコリ顔を返してくれた。
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