かぜねこ花鳥風月館

出会いの花鳥風月を心の中にとじこめる日記

あの「撮り滝野郎」は、天国の滝を今も巡っているだろうか

2021-08-12 15:00:11 | 日記

尾瀬の沼山峠から七入(なないり)に下る会津沼田街道(街道と言っても、いまは全くの山路)に抱返ノ滝(だきかえりのたき)という滝の案内板があったので立ち寄った。落差25mのさして大きな滝ではないが、女人の薄衣が風になびくような優雅な滝で、ちょうど10時の方向から日が射していて、より荘厳なたたずまいを見せていた。幾筋も枝分かれしながら岩を這うような水の落ち方なので、もっと近づいて滝つぼで水に打たれたら、さも涼しかろうとも思ったが、一人歩きの身、滑って頭打って気絶したら「ハイソレマデヨ~♪」ということにもなりかねないので、急に怖くなり身をひるがえし、下山の道に戻った。女人の姿にに魅せられた旅人が山の妖女に抱かれてそのまま帰ってこないので、「だきかえり」の名がついたのか・・などあらぬことを考えてしまった。名前の由来は不明でるが、何やら魅せられたのは間違いない。

かつて、仕事で知り合ったある団体の事務局長が大の「撮り滝野郎」で、当時風景写真家の定番でもあった重たい中型カメラ「ペンタックス67」と重い三脚を担いで、休日とあれば全国の名瀑・秘瀑をめぐっていると自慢げに語っていたのを思い出した。ぜひ作品を見せてくれとお願いをしていたが、屈強な筋肉質の方で、まだ50代にも満たなかった若さでありながら、ある日、その事務所でひとり倒れているのを発見され、そのまま.帰らぬ人となってしまった。脳卒中だったとか。山中の滝で、どこがお気に入りか、とうとう聞かずになってしまったが、あの自信たっぷりの言葉から推察するに、彼ならば、このさほど有名でもない抱返ノ滝をも67判を駆使して、より精緻で質感あふれる一枚のパネルに仕上げたことだろう。

デジタル社会の現在にあっても、風景写真家や山岳写真家といわれるプロや頑固なハイアマチュアは、フィルムカメラそれも67のような中判用ロールフィルムをもって、重い機材を肩に食い込ませてお気に入りのポイントに出かけていることだろう。それだけ、作品の仕上がりが違うということなのだろうが、「撮り滝野郎」たちは、重いザックばかりでなく、急こう配の湿った岩肌を伝ったり、道なき道を高巻いたりと命を賭しながら今日も全国の滝との出会いを求めていることだろう。元気だったら、かの事務局長もまだ現役だったかもしれない。それだけ、屈強でエネルギッシュな方だった。(合掌)

 

 

                     

 

 

 

尾瀬から帰って、肩にかけて手取りで撮ったコンデジG3Ⅹくんの記録を整理しようとしたが、撮った枚数が少ないのと、最近はあまりに画質が悪く、場合によってはスマホの写真の方が画質がよろしいので、すねている。コンデジばかりに頼っていて、写真を撮る真剣さと楽しさが薄れてきているせいかもしれない。

滝といい、沼といい、原といい、彼らから「ちゃんと真面目に撮ってね」といわれているような気がしてならない。来夏は沼にある長蔵小屋と原にある第二長蔵小屋に泊まることにし、三脚と一眼もって、出かけようかな。山に登らなくても、魅惑の風景はいっぱいある。フィルム67判にはとうてい及ばないが、デジタル35ミリでも、たくさんの宝物が得られるような気がしてならない。尾瀬はそんなところ。

 

 

         

 

 

 

 

 

         

 

 

 

 

 

 

             

 

 

 

 

 

              

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