日々雑感「点ノ記」

備忘録(心の軌跡)

カンゲとテンゲとオイゲ

2013年01月25日 | インポート
カンゲとテンゲとオイゲは、末尾に「ゲ」が付いているが、いずれも長崎県島原半島では通用する方言の単語。

「カンゲ」は、髪の毛→髪ん毛(かみんけ)→かん毛(カンゲ)と転訛したものと思われる。

「テンゲ」は、手ぬぐい→手んぐい→手んげ(テンゲ)と転訛したものと思われる。

「オイゲ」は、俺の家→俺家(オレゲ)→おいげと転訛したものと思われる。

使い方としては、

「おいげん風呂で、かん毛ばあるち、てんげで拭けばよかたい。」

標準語訳すれば、

「私の家の風呂で、髪の毛を洗って、手ぬぐいで拭いたらいいじゃないですか。」というところか。

言葉は、地域が変われば単語からして異なるものが多い。

島原半島の入り口の雲仙市愛野町と諫早市森山町の境界は、旧南高来郡と旧北高来郡の境界であり、その境は有明川という河川だが、その川を隔てて、言葉の違いが歴然としている。

古い愛野町における以下の文章の意味は、どの程度理解できるだろうか。

「ジブンドキん来たしぇん、シェーはキナにショイばかけち、オツケばのみながっ、モシナオシでシマヲイ。」

標準語訳すれば、

「食事の時間が来たから、おかずは菜っ葉の漬け物に醤油をかけて、味噌汁を飲みながら、温め直し飯で食事をしよう。」

以下の文はどうだろうか。

「こらブエンモンばってん、とれちかったいて時間のたっちょんせんか、いたんじょらんじゃいろカズンじみらじゃでけん。」

標準語訳すれば、

「これは無塩の鮮魚だけれども、獲れてからずいぶんと時間が経っているから、傷んでいないかにおいをかいでみなければならない。」

同じ日本語でありながら、単語自体の意味が分からないと、その内容を正しく理解する事は難しい場合もある。

そうなると当然の事ながら、相手との意思の疎通も難しくなる。

郷に入れば郷に従えというように言われているが、その地域で使われている言葉を覚えて使いこなすことが、その地域になじむための最初の課題の様にも思う。

その地域に無い新しい事を始めると、「しゃーしけて」と思われることも往々にしてあるように感じる。

「しゃーしけて」は、旧北高来郡地方の方言で、「しゃしゃり出て」とか「でしゃばって」とかいう意味。

「しゃーしけて」と思われないように、魚釣りでもして静かに暮らしたい。



豊田一喜






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