怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

「すいません、ほぼ日の経営。」

2019-03-07 22:33:58 | 
糸井重里という人は不思議な人です。
この本は川島蓉子による糸井重里のロングインタビューによって構成されているんですが、上場企業「ほぼ日」の経営者としての姿を見ると何かますます不思議さが感じてしまいます。

大学生の頃は中核派の活動家で佐世保事件の時に佐世保行きの列車の中でメットをかぶってテレビのインタビューに答えている姿を何かで見たことがある。幹部があまりに馬鹿でやめたそうですが、その後広告業界へ。
「不思議、大好き」とか「おいしい生活」などの広告で日本を代表するコピーライターとして名を馳せるようになるのですが、20年ほど前からウエブサイトに「ほぼ日刊イトイ新聞」をアップするようになり、毎日休むことなく書いてきた。この新聞を出すようになって糸井自身は個人商店のコピーライターから組織で何かをやろうとしたくなり会社を立ち上げていく。
ここから、今や80万部以上売れ、手帳売り上げ高でロフトではナンバーワンの「ほぼ日手帳」が生まれてき、数々のプロジェクトが生まれてくるのですが、何やら面白いことを考えたらプロジェクトを作って適当?にメンバーを集めて進めていく。基本的には糸井のワンマン経営かと思いきや、本人はそんな志向はない。
「ほぼ日」の行動指針というのは
・やさしく
・つよく
・おもしろく
ということで、言葉の順番にもこだわりがあって
「やさしく」を実現する力が「つよく」です。
その上に、新しい価値となる「おもしろく」をどれだけ生み出せるかが、ほぼ日の特徴です。
いや~ここだけを読んでいるとこれで会社経営がうまくいくのか?と思うのですが、糸井の理念をうまく取り込みながら順調に売り上げを伸ばしてジャスダック上場までしています。
それでも組織と言っても「上長」という人はいるみたいですが、決まった組織はなくてプロジェクトごと動いているみたい。人事評価と給料も合議で決めていくとか普通の会社組織ではありえない形です。糸井が直接全部に指示を出しているわけではないのでしょうが、その理念がうまく全体に浸透している感じです。
でも、でも、それで会社組織がうまく動いて行くのだろうか。大きな組織の中で公平性をどう担保するのかとか部門ごとの見栄の張り合いとか下らない足の引っ張り合いとか、何より糸井の顔色をうかがう輩ばかりになるのではないのかとか思うのですが、この本に書いてあることはそんな感じでもないみたいです。糸井自身の中にいつも自分を観察する自分がいて、ブレーキがあると言われると、あんたはえらいと言いたくなります。
採用でも「いい人募集」という形で「ほぼ日新聞」で告知して、書類選考と面接の結果「この人と一緒にやろう」となった人を採用する。
いい人とは何かとは書いていないのですが、ある種の運とか縁?三次面接四次面接までやって、最後は糸井自身にも加わるそうですが、手間暇はかけています。因みにどうして落ちたのですかと聞いてくる人もいるそうですが、それを聞いてきたこと自体が失格!女の子に振られた時にどうして振られたんですかと聞くかということです。
全体に組織をきちっとしたルールとか基準とかで縛ることはせずに感性とかよくわからないことで動かしている。糸井自身正直に平等とはよくわからないとか言っている。クリエィティブな仕事をするためには、どういう形の組織がいいのか考え続けているし、それはいまだ未完成でこれからも変わっていくのでしょうけど・・・
ところでそんな会社がなぜ上場したのか?上場すれば株主となる投資家は利益と成長を求めるので会社の理念、行動指針も影響受けるのではと思うのですが、糸井の考えは事業のベースは「人に喜んでもらえるか」で、上場することによって株主に応援団になってもらい、チャレンジして事業を広げていきたい。夢に手足をつけていく!それが次の成長に繋がっていく。そしていつか糸井がいなくなっても「ほぼ日」が続いて行けるようにしなくては。それは糸井個人商店ではなく「ほぼ日」という上場企業の務めでしょう。
因みに糸井の後の社長は立候補制にするとか。
ある種の理想なんでしょうけど、組織の中で嫌なところ、いいところを見てきて、なおかついい人ばかりでない組織では必要悪かもしれないですけど硬い縛りが何とか組織をつなぎとめていたようなことも見てきたので、どうもこの会社のイメージが具体的に湧いてきません。この魑魅魍魎の跋扈する欲望渦巻く資本主義の世界で、いい人を集めて面白いことをやるネバーランドを作ろうとしているのでしょうか。
こんな会社を作ってしまった糸井重里という人は本当に不思議な人です。
コメント
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