科学評論家として、著書も多い竹内薫さんですが、最近では情報番組のコメンテーターとして顔を見た人も多いかと思います。
この本は「怖さ」をキーにした科学のトリビア的な話題を書きだしたもの。
だから体系的な科学評論という訳ではなくて、私的にはすでに知っていること、別に怖いと思わないところもあったりして、気になるところをアトランダムに読み進めていけばいいのでしょう。
読んでへーっと思ったところ、気になったところををメモしておきます。
人が怖いという感情を抱くのには、脳の扁桃体が不可欠とか。どうも恐怖心などと言うのは厄介で克服すべきもののように思えますが、人類が生き延びていくのには不可欠なもので、高所恐怖症、閉所恐怖症、巨大物恐怖症などは人類が苦労して獲得してきた、生存のために必要な戦略だったとか。そこには森から出て草原で暮らすようになった人類の祖先からの捕食者から逃れ危険を避ける知恵が営々と引き継がれているのです。
したがって恐怖を感じない人は危険を察知できずに死ぬ確率が高くなります。でも現代社会は安全が確保されすぎているので恐怖心が邪魔になっています。野生の勘は必要ないし邪魔でもあるようになったかも。
・記憶については脳科学者の本を読むとその不可思議さに驚かされます。記憶というものの大半はあとから「上書き」されたもの。ここでは記憶の危うさによる冤罪事件を何例かあげています。催眠療法によっていつの間にかうその記憶が刷り込まれて証言する。結果物証ない中証言のみで犯人にされ刑に服した。恐ろしいことに最初は否定していたのに徐々に犯行を認めていき服役した例もある。いつの間にかやっていなくても自分がやったと信じ込まされてしまうかと思うとこれはちょっと恐ろしい。
・脳の一部を切り取るロボトミー手術、.今では否定されていますが、統合失調症の治療のために意義あるものとして発案者江ガス・モリスは1949年にノーベル生理学・医学賞を受賞している。確か北杜夫の「夜と霧の隅で」でもこのロボトミー手術について取り上げている。今現在では科学的に正しいと思うことでも将来的にはトンデモ療法となると言うことです。
・人間が宇宙服を着ないで宇宙に飛び出すと、真空とか温度の低さよりも、空気がないので、2分ほどで窒息して死ぬ。逆に言えば2分ほどは生きていける。でも本当に怖いのは降り注ぐ宇宙線とか。その面では人類は地球の地磁気と大気によって守られている。
・生物の大量の絶滅は過去に11回起きている。地磁気の反転とか、全球凍結とか巨大隕石の落下とかみたいですが、恐竜絶滅の原因とされるユカタン半島に堕ちた巨大隕石(直径10キロメータぐらいとか)は、小惑星が宇宙空間で1億6千年前に衝突して、その破片が1億年かけて宇宙を猛スピードで漂いながら6千5百年前に地球に落ちてきたもの。と言うことは恐竜の絶滅はその1億年前に決まっていた…映画アルマゲドンのように軌道を変えるなりできればいいのですが、直径5キロメートルの小惑星が地球に落ちる確率は1千万年に1回。私が生きている内にはないかな。「杞憂」と言うのは空が落ちてくる心配をする人間の中国の故事からきているのですが、まじめに考えすぎると心配で夜も眠れない?
・異端審問裁判で「それでも地球は回っている」と言ったというガリレオ・ガリレイですが、そのような発言の証拠はまったくなくて後世の創作だろうと。ガリレオは貧しい家に生まれながら大出世を遂げた人物で、才能にも恵まれたのですが、そつがなくお世辞も上手な人だったそうです。終生、敬虔なカトリっク教徒で社交界の貴族やローマ法王庁の重鎮たちと友人になっています。異端審問裁判にかけられたのは、神聖ローマ帝国とローマ法王との争いのとばっちりだったみたいです。どうも科学と宗教の対立と言うのは後世の捏造(多分フランス革命時代の啓蒙思想から)だったかも。
合わせて今回も箸休めに読んだ本を一緒にあげておきます。
大沢在昌の「冬芽の人」
大沢在昌の小説はテンポがよくて、多少の無理筋でも勢いで一気に読めます。ある事情で警察を辞め目立たぬようにОLとして生きている主人公は魅力的で、それがひょんなことから謎に迫っていく展開も面白いのですが、真犯人の集落の人を意のままに操る姿はやっぱりちょっと無理があるのかな。でも所在ない午後(ほとんどいつもですけど)寝っ転がって読むには面白かったですね。
この本は「怖さ」をキーにした科学のトリビア的な話題を書きだしたもの。
だから体系的な科学評論という訳ではなくて、私的にはすでに知っていること、別に怖いと思わないところもあったりして、気になるところをアトランダムに読み進めていけばいいのでしょう。
読んでへーっと思ったところ、気になったところををメモしておきます。
人が怖いという感情を抱くのには、脳の扁桃体が不可欠とか。どうも恐怖心などと言うのは厄介で克服すべきもののように思えますが、人類が生き延びていくのには不可欠なもので、高所恐怖症、閉所恐怖症、巨大物恐怖症などは人類が苦労して獲得してきた、生存のために必要な戦略だったとか。そこには森から出て草原で暮らすようになった人類の祖先からの捕食者から逃れ危険を避ける知恵が営々と引き継がれているのです。
したがって恐怖を感じない人は危険を察知できずに死ぬ確率が高くなります。でも現代社会は安全が確保されすぎているので恐怖心が邪魔になっています。野生の勘は必要ないし邪魔でもあるようになったかも。
・記憶については脳科学者の本を読むとその不可思議さに驚かされます。記憶というものの大半はあとから「上書き」されたもの。ここでは記憶の危うさによる冤罪事件を何例かあげています。催眠療法によっていつの間にかうその記憶が刷り込まれて証言する。結果物証ない中証言のみで犯人にされ刑に服した。恐ろしいことに最初は否定していたのに徐々に犯行を認めていき服役した例もある。いつの間にかやっていなくても自分がやったと信じ込まされてしまうかと思うとこれはちょっと恐ろしい。
・脳の一部を切り取るロボトミー手術、.今では否定されていますが、統合失調症の治療のために意義あるものとして発案者江ガス・モリスは1949年にノーベル生理学・医学賞を受賞している。確か北杜夫の「夜と霧の隅で」でもこのロボトミー手術について取り上げている。今現在では科学的に正しいと思うことでも将来的にはトンデモ療法となると言うことです。
・人間が宇宙服を着ないで宇宙に飛び出すと、真空とか温度の低さよりも、空気がないので、2分ほどで窒息して死ぬ。逆に言えば2分ほどは生きていける。でも本当に怖いのは降り注ぐ宇宙線とか。その面では人類は地球の地磁気と大気によって守られている。
・生物の大量の絶滅は過去に11回起きている。地磁気の反転とか、全球凍結とか巨大隕石の落下とかみたいですが、恐竜絶滅の原因とされるユカタン半島に堕ちた巨大隕石(直径10キロメータぐらいとか)は、小惑星が宇宙空間で1億6千年前に衝突して、その破片が1億年かけて宇宙を猛スピードで漂いながら6千5百年前に地球に落ちてきたもの。と言うことは恐竜の絶滅はその1億年前に決まっていた…映画アルマゲドンのように軌道を変えるなりできればいいのですが、直径5キロメートルの小惑星が地球に落ちる確率は1千万年に1回。私が生きている内にはないかな。「杞憂」と言うのは空が落ちてくる心配をする人間の中国の故事からきているのですが、まじめに考えすぎると心配で夜も眠れない?
・異端審問裁判で「それでも地球は回っている」と言ったというガリレオ・ガリレイですが、そのような発言の証拠はまったくなくて後世の創作だろうと。ガリレオは貧しい家に生まれながら大出世を遂げた人物で、才能にも恵まれたのですが、そつがなくお世辞も上手な人だったそうです。終生、敬虔なカトリっク教徒で社交界の貴族やローマ法王庁の重鎮たちと友人になっています。異端審問裁判にかけられたのは、神聖ローマ帝国とローマ法王との争いのとばっちりだったみたいです。どうも科学と宗教の対立と言うのは後世の捏造(多分フランス革命時代の啓蒙思想から)だったかも。
合わせて今回も箸休めに読んだ本を一緒にあげておきます。
大沢在昌の「冬芽の人」
大沢在昌の小説はテンポがよくて、多少の無理筋でも勢いで一気に読めます。ある事情で警察を辞め目立たぬようにОLとして生きている主人公は魅力的で、それがひょんなことから謎に迫っていく展開も面白いのですが、真犯人の集落の人を意のままに操る姿はやっぱりちょっと無理があるのかな。でも所在ない午後(ほとんどいつもですけど)寝っ転がって読むには面白かったですね。