怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

北村薫「八月の六日間」

2023-03-24 21:57:50 | 
図書館で北村薫のまだ読んでいない本を見つけたので、早速借りてきました。

題名からは何か緊迫の6日間のサスペンスかと思たら、さにあらず。
出版社の編集部で副編集長を勤めているアラフォーの女性が主人公。
一緒に住んでいた男と別れ仕事一筋なのだが、生来の負けず嫌いと不器用さゆえに心すり減らす日々。
そんな時後輩編集員から山歩きに誘われ、初めて参加したのだが、いつの間にか登山にはまることに。
それでも行く時はその性格ゆえに他の人に気を遣いたくないし気を遣われたくない、自分のペースで歩きたいのでもっぱら単独行。「孤高の人」です。
その山行きの日程が、時間を追って「9月の5日間」「2月の3日間」「10月の5日間」「5月の3日間」「8月の6日間」ですが、その間に仕事のことや分かれた男のことなどそれなりにごちゃごちゃしながら編集長になっています。
最初こそ初心者もハイキング気分で登れる滝子山にグループに行ったのですが、その後は結構ハードな登山コースが出てきます。
実は「グレートトラバース」が好きで、今、朝にBSでやっているので毎日見ているのですが、田中陽希はコースタイムの半分近くの時間で駆け抜けていくのですが、主人公はコースタイムより時間をかけて自分のペースであえぎあえぎ歩いています。それでも途中の風景とか様々な状態の山道、高山植物の素晴らしさ、山小屋の雰囲気、装備とか荷物の詰込みとかのシーンはこの本の中でも出て来て、文章で読むと映像とはまた違ったと言うか表しきれない情景が浮かんできて、こういうことだよねと納得できます。
本の最後には、この本で登っているのは比較的難度が高い山々なので登山初心者・未経験者は気軽に山登りしないようにと注意してあります。山道で単独行は捻挫したり動けなくなったりしたらそのまま大事故につながることもあるだけにもっと大きく書いてもいいぐらい。
とにかく最初の9月の5日間で早くもアルプス銀座を歩き燕岳、大天井岳さらにはあえぎながらも槍ヶ岳まで登っているのですから。アラフォーから始めて3年目での単独行の槍ヶ岳はちょっときついではないかなとは登山とは全く縁がない私の率直な感想。
会津の冬の雪中トレッキングツアーを挟んでしばしば休暇を都合してアルプスへ単独行登山。下界ですり減った心を山歩きで癒している。単独行の良さで同行者に合わせる必要なく自分の体の具合に相談しながら自由に予定を変更してもいいし、時には途中で断念してもいい。同調圧力に流されやすい世の中で自分の判断で自己決定できることも魅力なんでしょう。
街中を徘徊するぐらいの私から言うともう少し低い山をこまめに歩いて行くのでもいいのかと思うのですが、3000メートル級の山歩きの素晴らしさを知ったらやめられないのか。もう少し(大分か)若ければ先達を見つけて山歩きを始めてみようかとも思わせる本でした。
もう1冊は平松洋子の「パセリカレーの立ち話」dancyuに連載されている人気エッセイをまとめたもの。いつもの平松さんのエッセイで定番の面白さがあって安心して読めます。もっともレシピも書いてあるパセリカレーはあまり食指が動かないのですけど美味しいんでしょうか。食べず嫌いはよくないので一度は挑戦する価値はあるかも。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする