怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

今野敏「石礫」・逢坂剛「相棒に手を出すな」

2023-01-18 14:02:15 | 
今野敏の小説は読みだすと止まらない。一気呵成に読んでしまいます。
今回は警視庁機動捜査隊渋谷分駐所の機捜車235の高丸卓也と縞長省一が主人公。と言うか高丸が狂言回しで主役は縞長。五十代後半で機動捜査隊としては新入りなので高丸が一応ペア長と言うことになっている。機捜に配属される前は捜査共助課の見当たり捜査班にいて、見当たり捜査のレジェンドと言われていた。その実力から機捜に配属されてからも実績を上げている。

今回も爆弾テロの指名手配犯を見つけ、そこから新た爆弾テロの計画を阻止していく。
見当たり捜査のレジェンドと言われるだけに、犯罪者の顔の特徴を記憶して街を歩いている犯罪者を見つける。
そこに至るまでには縞長は捜査共助課で毎日千人くらいの顔写真を見て、その特徴を覚えられるようにする。そのうえで街角や駅の人ごみに立って実践。そうすると五百人くらいの顔は覚えられるようになる、超人的な能力ですが、訓練次第ではできるようになりそうだと思えてくるので、本当にそんな人がいるかもしれません。
話は警察の総力を挙げた地道な捜査と縞長の推理によって、紆余曲折がありながら徐々に進展して、犯人を追い詰め、爆弾テロを阻止するのだが、まあ、そこは小説なので、縞長の見立てがずばずば的中して、あまりにも調子良く捜査が進むのですけど、そのテンポの良さが読み進めるのに心地よい。
今野敏の警察小説は多くのテレビドラマの原作になっているのですけど、推理中心ではなくて犯罪捜査する警察の組織としてのいいとこと悪いところ、警察官の複雑な感情が丁寧に描かれているのが魅力。必ずしも警察組織がまとまっているわけではなく部門それぞれの対抗心とか権限の張り合いとか功名心とか名誉欲とかが錯綜していて、そこをうまく取りまとめながら何とか事件を解決に導いていく。その点は警察だけでなくいろいろな組織の中で日常的に起こりうることで、自分のことに当てはめて共感しながら読んでいくことが出来ます。
もう1冊は今度は逆に警察とはあまりお近づきになりたくないようないかがわしい生業(裏ビデオ販売とか詐欺師まがいの探偵とか)の腕力も資力も平均以下で口達者で機転で切り抜ける主人公のコンゲーム小説。これもすいすい読めるのですけど、逢坂剛の小説としては岡坂神策シリーズとかスペインものとか禿鷹シリーズ、百舌シリーズとかと比べるといかにも軽い感じで、お茶の水警察署の凸凹コンビのシリーズと同様の箸休め的な位置づけと言えばいいのか。でもその方が気軽に読めるので、その日の気分によってはいいかも。
もっともそこは逢坂剛さんなので単純な一直線の展開ではなくて、必ず最後に一ひねりも二ひねりもあって、いい意味で裏切られて話の展開を楽しめます。
それでも主人公の相棒というか恋人というのが少し太めの美人の「ジリアン」こと四面堂遥、頭の回転が速くて悪知恵が働き、人間観察が鋭い。ジリアンとは「Xーファイル」シリーズのヒロイン役で名を売ったジリアン・アンダースンのことと言うのですが、わたしはそのXーファイルを見ていないし、当然ながらヒロインのジリアンはまったく知らない。そのために人物像が浮かばないし、どうも実感がわかないんだよね。そこがイマイチ小説の世界に没入できないところなのか…

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