東大医学部の教授をしていて当然医師である養老先生ですが、医者嫌い。
健康診断とかがん検診とかは受診したことがないのだが、2020年6月に体重が激減(何と15キロ減)して、さすがにこれは尋常ではないと思い東大医学部の中川さんに頼んで受診。
中川先生としては体重の激減としてはがんを疑い、この際ばかりにいろいろ検査を行ったのだがのだが、結果は心筋梗塞。すぐにステントを入れる手術をして2週間ほど入院しています。痩せたのは糖尿病が原因で入院時のヘモグロビンA1Cは10.2!。いろいろ検査しても幸いなことにがんは見つからず、大腸にポリープは見つかったのですがほかっておけばいいと切除はせず。それでも白内障の手術は受けています。
入院時は養老先生曰く俎板の鯉でわがままを言うことなく懸念していた禁煙もきちんと守って無事退院します。
この辺のいきさつは「養老先生病院に行く」に詳しく書いてあるのですが、これはその続編。
基本的に病院嫌いの養老先生は退院後の通院は適当にスルーして薬(一日9錠)だけは服用している状況でしたが、あまり受診しないのも中川先生に悪いと思ったのか、1年数か月ぶりに東大病院に受診することに。糖尿病は血糖値の管理が大切なのですが、養老先生は自己流(一応青木厚「空腹こそ最強のクスリ」という根拠はあり)の一週間1日16時間絶食でヘモグロビンA1Cまで下げて糖尿病医師を黙らせている。中川先生もこの爺さんに何を言っても無駄かもしれないと思いつつ自分なりの健康法をしていることに苦笑しているのが目に浮かびます。
退院後2年ほどの経験を踏まえて、老い、医療、健康、死などをの養老先生が縦横無尽に語っています。中川先生はそんな養老先生に全面的には賛同できないとしても、一理ある面もあるかとフォローしつつ語っています。
それにしても齢85歳になる養老先生には怖いものなし。その主張は小気味よく、都合のいい点だけはつまみ食い的に取り入れたい気分です。最近ベストセラー連発の和田秀樹が主張しているところとも重なります。因みに和田秀樹は中川先生と東大医学部の同級生とか。先日心筋梗塞で亡くなった近藤誠さんの主張とも重なっています。近藤誠さんは中川先生の先輩で、その主張に首肯できないところは多くても考慮すべき観点は多々あると言っています。近藤誠さんは死ぬのならがんがいいと言っていましたが、その点では中川先生も同感。でも近藤先生、心筋梗塞で急死したんですよね。
養老先生、大腸ポリープが見つかったのですが、そんなものは調べなければ存在しないし、ポリープからがんになるのには20年かかるのだから80過ぎの自分には関係ない。かゆみが強いので内科の教え子に相談したらかいちゃダメ、かゆみで死んだ人はいないのだからよほどひどくならない限り我慢しろというのは如何なものか。
愛煙家で入院中こそ禁煙していたのですが、退院すれば吸いたい時にはたまに吸っている。肺気腫があるそうですけど歩けば気持ちいいのでそんなに肺は壊れていない。これまでタバコが普及してきたのはメリットもたくさんあったからで、脳に溜まっている無秩序を清算してスッキリさせていると言う。さらに言えばタバコをやめて発がんリスクが吸わない人と同じになるのは20年かかるので85歳の自分には意味がないと言うのは、納得します。
養老先生は死とは自分ではどうしようも出来ないことなので「気が付いたら死んでいる」でいいと言う。いろいろ物をため込んでは残された家族に迷惑かけると言うけれど何事も順送りで残された者は大変だけどそう言うことが順送りに繰り返されるのが人生というものなんです。死んだ後も自分の思い通り世界を動かそうと言うつもりなのかと言われると一言もありません。
中川先生も言っていますが、「老い」と「加齢」は違い、加齢による身体的能力は衰えても老いによる経験値は的確な判断に資している。
加齢による連続的な体調変化は恐れることではないが不連続な体調変化には気を付けなければいけない。
認知症の発症リスクの一番多いのは難聴で8%とか。聞こえにくくなったら迷わず補聴器をつけましょう。口腔ケアも大切で日本では欧米と比べて遅れていて、中川先生は月1回歯垢歯石除去のケアをしてもらっていると言うのですが、私は歯医者に3月に一度と言われていて、言われると律儀な性格なのでそれは守っています。
血糖値の管理についても脳が使うエネルギー源は基本的にブドウ糖なので血糖値が下がりすぎると脳が働かなくなる。下げればいいと言うものではないみたいです。そう言えば和田秀樹さんも検査数値は気にするじゃないと言っていましたよね。
胃癌の原因と言われているピロリ菌ですが、除菌すると胃がんのリスクは減っても逆流性食道炎になるリスクがあり、元々全員持っているものを強制的に除菌した場合長期的にどうなるのエビデンスはない。まあ、ピロリ院を除菌しても85歳の養老先生にはがんのリスクを減らすメリットはないのでしないと断言。血圧についても薬は絶対飲まない。血圧というのは体の方で勝手に調整しているのだから外から余計なことをするんじゃないと思っていると言われると最近血圧が高めの身としては、まあ、いいかと勇気づけられる。
養老先生は具合が悪くなったら1週間様子を見ると医者に行くべきかどうかが分かると学生時代に習っているのですが、今でもその教えを守っているみたいで、自分の体の声を聴いてみることです。
病院の医師としては反論が多いと思いますけど85歳になっても活発に発言している養老先生に向かっては何も言えないのでは…
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