ドイツはビール大国であるが、キリンやアサヒのようなナショナルビールはない。すべて地ビールでその土地に根ざした地ビールである。ケルンではケルシュビール。200ccのグラスにピルスナータイプのビールを注いで、空いたら勝手に次のグラスを持ってくる。わんこそば方式なのだ。油断していると延々お代りすることになる。
ケルンの次に訪れたのはヴッパータール。世界で最も古い懸垂式モノレールがある。懸垂式モノレールって?鉄道オタクにしか分からない用語に思えるが、要するにぶら下がり方のモノレールである(ヴッパータール空中鉄道というらしい)。日本では千葉と神奈川にしかないそう。ヴッパータールのモノレールは景色がすこぶる良い。川の上をずっと走るのだ。ぶら下がり型ゆえ、茂る木々も美しい。それで、デュッセルドルフからバスで45分(鉄道駅が改修中で運休中だった。)かかるが、わざわざ行ってみた。ヴッパータールそのものは特に観光客が来そうにもない地方都市。しかしあのピナ・バウシュ舞踊団の本拠地であるというのだから、これも舞踊好きにはたまらない、がそれだけである。
駅前のショッピングモールといい、どこにでもある街。駅からも歩いてすぐのフォン・デア・ハイト美術館は規模はそれほどでもないが、ドイツ表現主義の作品がそろっていた。デュセルドルフに帰るバス乗り場が分からず、美術館の年配の係員は英語が通じず、インフォメーションセンターのお姉さんは、はっきりとは分からないという。列車運休の臨時バスだから仕方ないか。なんとか、探し当ててデュセルドルフまで戻った。
デュセルドルフにはK20州立美術館とK21があるのだが、駅から歩いていけると思い、K21だけ訪れた。ドイツはワイマールの時代まで統一国家がなく、フランスやイギリスのような国立大美術館(ルーブルやナショナル・ギャラリーみたいな)がない。それで州単位の美術館が発展し、これが巨大とは言えないけれど軽んじられない規模なのだ。K21もK20とともに十分な規模なのだが、疲れていて結局K21しか行けなかった。K21は現代アートである。面白かったのが体験型、金属製の巨大なトランポリンのような網。作業着に着替えて大人だけが許される不安定な網に体を委ねると、平衡感覚、腹筋、背筋いずれもない者はすぐに転んであたふた。どうにか立ち上がって進むが、下に落ちないとわかっていてもこれがスリル満点で、予想できない揺れにいい大人たちが歓喜をあげる。結局30分ほどの制限時間では、筋力、柔軟力のない者はいろいろとは歩きまわれなかった(つまり筆者のこと)。それでも十分楽しめたのが、体験型現代アートの妙。体験型というと結構子ども目当てのものも多いが、これは網目の大きさもあり、小さな子どもは参加できないよう。まあ、ドイツ人は大きいから子どもといえども小学生高学年くらいなら参加できるのだろう。
デュッセルドルフには近代までのK20美術館や近代絵画の収集で有名なクンストバラスト美術館もあったが、今回は時間的に訪れることができなかった。とても残念。
デュッセルドルフのビールはケルンと打って変わって、濃いめのアルトビール。これをケルシュのようにじゃんじゃん注がれたらかなわないが、幸い、注文してはじめておかわりを持ってくる。2杯目はヴァイツェンタイプをいただいた。まだ今回の目的ミュンスターにもカッセルにも辿りついていないのに、アートの旅かビールの旅かよく分からなくなってきた。(ヴッパータール「空中鉄道」)
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