ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
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本物の「偽薬」を販売するプラセボ製薬

2020-01-21 10:20:54 | 
30錠で税込み999円の「偽薬」を製造販売する会社が存在します。

これは「偽薬」を本物の薬として販売する詐欺ではなく、「本物の偽薬」として堂々と販売しています。偽薬(プラセボ)とは、薬効成分を含まない製剤で、新薬の有効性や安全性を科学的に評価するために開発されたものです。

しかしプラセボ製薬が扱っているのは、臨床試験で使われる偽薬ではなく、本物の偽薬です。これはほぼ糖と食物繊維からできており、アルミ面から1錠ずつ押し出すシート包装(PTP包装)を採用するなど、本物らしい見た目にこだわっています。

これはプラセボ効果を狙った商品で、偽薬を飲んであたかも本当の医薬品を服用したかのような変化を期待するだけではないようです。プラセボ効果があるから価値があるのではなく、むしろ効果がないからこそ価値があるものとして製造販売しているようです。

定められた量の薬剤をすでに服用したにもかかわらず、何度も服薬を求める認知症の人や、規定量では効果を感じず増量を求める不眠症の人、健康不安から風邪薬を飲み続けてしまう人などには有用となるようです。

こういった薬の飲みたがりや飲み過ぎは、特に高齢者介護の現場でよくみられる光景です。朝日新聞の調査によれば、飲み続けると転倒や骨折、認知機能の低下を招きやすいとして、高齢者はできるだけ使用を控えるべきだとされている睡眠薬や抗不安薬が65歳以上に多く処方され、ピークは80代だったという報道もあります。

これは高齢者ほど整形外科や精神科、内科など別々の診療所から同じタイプの睡眠薬や抗不安薬を処方されていて必要以上の量を飲んでいる人が少なくないという事のようです。

偽薬はこうした薬の飲み過ぎの問題に大きく寄与するとしています。誰しもが健康でありたいと願っていますが、科学では病気でない状態といった否定的な表現でしか健康を定義できていません。

つまり科学において健康は不確かで捉えどころのない虚構的な概念といえます。こうした状況で健康を求めると、健康の終わりなき追求となり「健康病」となる人が高齢者を中心に生じてしまいます。こうしたものの対策として「偽薬」がこの健康病への役割を果たすことを目指しているようです。

これは非常に面白い発想で、私の考え方とも一致しています。このプラセボ製薬が企業として成り立つかどうかわかりませんが、こうした考え方が浸透していけば、高齢者の多剤服用問題も解決できるような気がします。