ごっとさんのブログ

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男性が基準の医学の世界

2020-01-22 10:14:44 | その他
今の医療制度、治療法、研究の支援などは、人口の半分を占める女性たちが使うにはあまりに穴だらけのようです。

男性が支配してきた医学の世界では、治験も主に男性が対象でした。あくまでも男性が「基準」であり、新薬の効果も男性だけ調べれば事足りるとされてきました。

妊娠・出産が可能な年代の女性は安全面の理由から除外され、それ以外の女性もホルモンの男女差を関連要因から除外するために対象から外されていました。

私が臨床試験に関係していたのはもう20年以上前で、実際に携わるわけではなく結果の報告を受けていただけですので、男女比率については記憶があいまいになっています。

臨床試験の第Ⅰ相は、健康な成人に安全性や薬物代謝など基礎的データをとるもので、昔は学生アルバイトを使っていました。ホテルに3,4日缶詰になり、何回か血液検査を受けるだけで、良いアルバイトだったのですが、学生を使うのは良くないという事になりそれ以後は、製薬会社の開発担当など身内の人間を使うようになりました。

私はこれに参加したことは無いのですが、確かにほとんど(全員かもしれません)男性が対象となっていたようです。

実際の患者に投与する第Ⅱ相は、病院の入院患者ですので男性ばかりという事は無いはずですが、多分男性が多かったことは確かなようです。

1993年アメリカ国立衛生研究所は、女性の被験者をもっと増やすように求めましたが、2016年に医学誌が行った分析では、確かに女性の割合は増加しているものの、人口比を必ずしも正確に反映しているわけではありませんでした。

調べを進めるなかで、医薬品の安全性や有効性を男女別に分析することすら行われていないことも分かりました。男女の生物学的な相違や医療効果の差まで把握するには、女性のみを対象にした研究が必要になりますが、これまで全く行われていませんでした。

しかし男性中心の医療といっても、別に男性向けの医薬品を目指したことはありません。むしろ医薬品の研究に当たって、男女の差を全く考えていなかったことが問題なのかもしれません。

アメリカでは一つ以上の慢性疾患にかかっている女性の割合は38%で、男性は30%というデータもあり、女性は男性よりも慢性疾患や免疫疾患を抱えている人が多くなっています。

冠動脈疾患の場合、死亡率は女性の方が高く後遺症も深刻ですが、研究予算は男性対象の方がはるかに多いという実態もあります。女性向けとうたって発売される医薬品が、かえって女性の害になっていることすらあるようです。

こうした現状を見ると、女性が被験者になり意思決定できる研究や治験がまだ足りていないことが分かります。医薬品の効果も男性と女性では異なる可能性もあり、今後は女性を対象とした研究も必要となるでしょう。