客観的にみても、一体どれだけツイてないのか、と思うくらい辛い目に
合い続けている友達がいる。プライベートなことなので内容は控えるけど、
神様、もう彼を許してあげてください、と言いたくなるくらいそれはそれは
大変なのだ。
その友達に久しぶり―といっても1ヶ月ぶりくらい―に会った。そして、会っ
てびっくりした。わずか1ヶ月会わない間に恐ろしく白髪が増えていたのだ。
電話では、最近また大変なことになってるというのは聞いてたけど、今まで
そんな急に白髪が多くなったことなんてなかったので、ここ1ヶ月間の苦労
というのは、今までの苦労と重なって、たぶん今まで一番大きいものやった
んやろう。
それでもいつも彼はほとんど愚痴をいうこともなく、黙々と、そして淡々と生
きていて、そんな彼を俺は尊敬している。その彼がこの間ふとこんなことを
もらした。
「ちょっと何かのタイミングがずれていたら俺は自殺してかも知れない。でも
死ぬのはホントに簡単でいつでも死ねるからこそ、そう簡単に死ぬことはし
ないでおこうと思ってる」、と。
そう、考えてみれば、自分で命を裁つことは、いつでもできるとても簡単な
ことなのだ。なのに、世界30ヶ国以上の内戦で、親の我儘で、行政の不
手際で、訳の分からない殺人鬼に、自分で命を断つ自由さえ奪われて
いる人(幼い命も含めて)のなんと多いことか。
ということは、生きていく辛さを味わえるだけで、十分に幸せなのかも知れ
ない。だから、最後に俺は彼にこう言ってやった。
「お前、白髪でもあるだけええやんけ」