3日目、雨。だけど日は射していたり変な天気。
チェックアウトして車を玄関にまわしてもらうまでの間に、ホテルの売店で「萩の月」(仙台というとこの土産!というメジャーなお菓子)を探すが、ない。とYに言ったら「ここは岩手だからね・・・」と言われた。それもそうだった・・・。とすると、このまま買えないのか。ううむ、会社への土産の予定が狂った。
出発客のラッシュが終わったのか、ドアボーイさん(オッサンだが)が荷物を車に積んでくれていると、ロビーや駐車場にいた従業員さんたちが見送りにわらわらと寄って来て、口々に「かわいい車ですねー」「初めて見たわー」とめずらしがる。ト○タレンタカーで借りた車は「iQ」。普通の乗用車の後ろ半分をぶった切ったようなコンパクトカーだ。一応4シーターだが、後部座席はとても狭く、私たちはシートを倒してトランクとして使用していた。確かにかわいいし(そう思って指定した)小さいだけに燃費もいいが、いかんせん、バックするとき後ろが見づらい!駐車場とかはバックで入れるし、しょっちゅう方向転換する(道に迷うからな!)私には、使いづらいよ。
今日はYの運転。まずは遠野へ向かう。この天気だとスピード出せないから、往復に時間かかるかなあ、と心配だったので、花巻南ICから花巻JCT経由で釜石自動車道に乗ろうとした・・・が、いきなりICのETCゲートが開かなくて立ち往生。
「すまん・・・。カード逆向きに差してた・・・」
だってうちの車のETC装置は、うまく入っていないと警告音が鳴るのに、これ鳴らなかったんだもん!
料金所のおじさんがやってきて、「カード持ってるの?あそう。じゃあ降りるときは一般車用の料金所通って、このチケットと一緒にETCカード渡して。割引してもらえるから」とチケットをくれた。後続車の皆さま、足止めしちゃってすみません
自動車道は東和というところで途切れていて、そこから先は釜石街道をちんたら走る。JR釜石線が併走しているのだが、単線だったので興奮してしまった。単線・・・なんか見るとテンション上がりませんか?なんか田舎に来たーって感じで。(失礼な)
「この線路、めがね橋を通るはずなんだけど。宮沢賢治が『銀河鉄道の夜』のモチーフにしたとかいう・・・。どこかなー。車から見えるかなー」
と地図と見比べながら線路を追う。やがて、前方に石の橋が。見えるどころじゃなく、その下をくぐった。
「写真撮りたい!どこか車止められないかな?!」
「あれサービスエリアっぽくない?」
「何でもいいや、入っちゃえ」
そこはスーパーマーケット(?)と併設されてるサービスエリアらしかった。しかもめがね橋(宮守川橋梁)が遮るものなく眺められる芝生エリアがあった。たぶん、観光客用にそうしてるんだろうなー。それにしても車から出たら寒い。そういえば朝テレビで見た天気予報では、岩手は最高気温6度、最低気温3度だった。それ、11月の気温じゃねえよ!東海地方の感覚では、真冬です。ウールかダウンのコート着るよ。一応名古屋よりは寒かろうと上着は秋用だが薄めのセーター2枚重ねにしてるんだが・・・。だいたい名古屋は旅行に来る直前あったかくて、最低気温が10度くらいだったんだぞやっとれん・・・。
あとは寄り道することなく遠野へ。遠野伝承園の駐車場に車を置き、カッパ淵へ向かって歩く。カッパ淵は常堅寺の境内を突っ切っていったところにあった。
とても素朴な小川という雰囲気だった・・・。浅い水は透き通っている。この川に沿って行くと田んぼに出る。と言ってもこのあたりは畑か田んぼばっかなのだが。鴨がのんびり泳いでいる・・・。うーむ、カッパが泳ぐには浅くないか?昔は「淵」というくらい水量があったのかもしれんな。
ほんとはこの辺りをのんびり散策したかったが、とにかく寒い!カッパ淵のあたりこそ木があるが、一歩離れると吹きさらしで風が強いのだ。耐えられん・・・と伝承園へ。雨もひどくなってきた。曲がり家を見学。中に「オシラサマ」を祀る「オシラ堂」があって、壁から柱からびっしりと「オシラサマ」の人形が貼り付けてあって、異様な感じ。
ところで、「オシラサマ」というと私は娘と飼い馬の悲恋物語の馬が神としてあがめられるようになったという話と、もともとは重要な農産物である蚕の神という話の両方が記憶にあるのだが、どっちが正しいのだろうか。「オシラ」は「御白」で白い繭の蚕を現すような気がするし、かといってじゃああの物語が由来だというのは何だ、ということになるし。娘が両親の夢枕に立って養蚕を教えたとかいう後日譚はこじつけっぽいな。農業全体の神っつったって、なんで蚕と馬とが結びついてひとつの神様になるのかねー。わからん・・・。余談だが、娘と馬が夫婦になったとか、殺されて切られた馬の首に乗って娘が昇天したとか、なんかエロい話だなーと思うのは、ワタクシがヨゴレてるから?
寒い。本当はもっとあちこち行ったり散策したりしたかったが、あまりの寒さに車から外に出る気がしない。暖かい時期に出直すことにしよう、と花巻に戻ることにしてしまった。
花巻ではまず宮沢賢治記念館へ。入ってすぐに、オッサンたちの一団がやってきて、オッサンたち相手に学芸員が説明を始めた。館内撮影禁止だというのに、その様子をデジカメで取っている男性もいる。彼らが去ったあと、
「なんじゃありゃ・・・。どっかの学校の先生たち?」
「たぶん違うよ。おじさんたち興味なさそうだったから、どこかの議員とか役人とかの視察じゃない?」
「興味なさそう・・・?金の無駄だな!」
宮沢賢治記念館は見ごたえあります。賢治の小説に出てくる鉱石の見本が展示されていたり、童話のアニメが見られたり、ちゃんと見るとけっこう時間かかる。
昼食は記念館と同じ敷地内にある「山猫軒」へ。私はホロホロ鳥の(岩手で飼育されているらしい)のチキンカツ定食、Yはチキンカツ丼を注文。ホロホロ鳥、うまいっス。
その後、宮沢賢治童話村へ。・・・うーん、ここは対象年齢小学生って感じだなあ・・・。宇宙をイメージしてまるでねずみの国の(笑)スペースマ○ンテンのような部屋があったが、高所恐怖症のYは「勘弁して・・・」とさくさく抜けた。その次の部屋も「岩手の自然」だとかで、足元ガラス張りの下のモニターに飛行機から撮った岩手の風景が映され、Yは「上に乗れない」とガラスから離れて壁にへばりつくように通り抜けていた・・・。気の毒な。私は自分が実際に高い場所にいるのでなけりゃ平気なので、ガラスの上に立って眺めてたけど。
最後の部屋ではモニターでアニメが上映されていた。その話は「ヤマナシ」(山に自生する梨の実)というタイトルで、川の底に住む蟹の兄弟が、カワセミ(だったかな)が川魚を取るために水の中に突っ込んできたのに驚いたり、ヤマナシの実が落ちてきたのを不思議がるとかいう(アバウトすぎる・・・。もうちょっとリリカルな表現があったであろうと思われる)話だった。私はその話を読んだことがなかったので、終わって・・・。
「へ?これで終わり?」
「うん」
「え?オチはどこ?」
「そんなものはない。これだけの話」
「流れていったヤマナシの実を追いかけて、蟹の兄弟の冒険が始まるとか、そういう展開じゃないの?それともあの落ちてきたものは何なのか哲学的な探求をするとか・・・なんか意味ないの?」
「ない」
「え・・・ええーっ!それじゃほんとに『やまなし・おちなし・意味なし』じゃん!」
いやもう、ショック・・・つーか、賢治というと「注文の多い料理店」とか「よだかの星」とか「グスコーブドリの伝記」とか「銀河鉄道の夜」とか「セロ弾きのゴーシュ」とか「永訣の朝」とか・・・そういうイメージしかなかったので、あまりにもリリカル(という表現でいいのか)な話にビックリだよ!
「童話だからこれでいいのか・・・ううう、やまなし・おちなし・いみなしだよう・・・」
と呟き続けるワタクシ。
雨はひどくなったり小降りになったり。結構外にいるときは小降りで、車で移動中にひどくなるというタイミングだけは良い私たち。ただどんより曇り空で暗くて滅入るしとにかく寒い。日が暮れる前に、と我々は「イギリス海岸」へと向かった。記念館には、北上川の水量が多いので、普段は白い河床は見えないと書いてあったが、ここまで来たからには見えなくても行っておかねば。
寒い寒いを連発しながら、車を置いて(駐車場があるらしいがどこだかわからなかったので、近くの公民館・・・なんつーとこに・・・に置かせてもらった)川へ歩いて行った。
北上川はとっても深そうだった。轟々と水が流れている。標識に従って堤防の散策路を歩いていく。と、わずかながら白い地層を発見。
「こ、これか・・・!水がなくなれば、あれと同じ白い河床が露出するんだな」
見えますかねー。左の突き出た部分の水面から露出した部分が白いのと、この写真だと色がよくわからないけど、突き出た部分の右、川の中にちょっとだけ頭をのぞかせている出っ張り。これは実際にはもっと白っぽくて、砂岩が水で削られて残ったもの。つまりこの川の底は白っぽい砂岩なんですねー。
その後は賢治作品を題材にしたグッズを売っているお店をのぞいて時間を潰し、空港へ。花巻空港近くのレンタカー店に着いた頃には、つるべ落としにあっという間に暗くなっていた。
実は、昨日は強風で道に木の枝とかがいっぱい落ちていて、避けられず枝を踏んだせいで車体の下の方にちょっと瑕が付いてしまっていて、弁償しろとか言われたらやだなーと思っていたのだが、店員さんは書類を受け取ると車のチェックもせず(ガソリンが満タンかどうかくらい見ろよ・・・)、空港に送りまーす、と私たちをバンに乗せてしまった。結構アバウトで助かったぜ
空港の売店で、そういえば酒屋に寄るの忘れてた、と地酒を購入。あと猫の世話を頼んだ姉に何か買っていかねば(会社用はすでに購入済み)、と思ったら・・・。なんと、「萩の月」はなかったが、「岩手の月」を発見。バッタもんぽい(笑)ところが気に入ったぜ!とこれに決めた。(←お前の感覚はおかしい・・・とセルフ突っ込み)
そうして我々は名古屋に戻り、前半はマニアック、後半はフツーに観光の東北旅行を終えたのであった。ちゃんちゃん
☆費用明細
11/14 ANA中部→仙台 @11,300円(バーゲン割)
11/16 JAL花巻→中部 @12,300円(バーゲン割)
11/14-11/16 レンタカー(ワンウェイ料金含む) 25,725/2名=@12,862円
11/14 ホテル華夕美 25,700/2名=@12,850円(楽天1600ポイント使用)
11/15 愛隣館 30,200/2名=@15,100円(じゃらん3300ポイント使用)
合計 @64,412円