たくさんの紬を本郷織物のお宅で見た
知っているのは「草木染め」
しかしこの時代は科学染めが本流で
染のことなどくどくど質問するのも憚れた
すぐ頭を切り替え「織」についての取材にする
なんと言っても織り機は上田光乃さんの卓上織り機と
くさき寺工房の機織り機しか見たことがない
なにせ母たちが「きょうはおじやにする」と言っているのを
「嫌だおじやは嫌」と食べるおじやのことだと信じて疑っていなかった
それくらいの着物音痴
だから「紬」と言われても理解不能
繭から糸を紡ぐ、その糸を経糸と緯糸にする
その2つは糸の強さが違ってくるので「撚り」のかけ方を変える
つまり経糸は強くなくてはいけない
「お父さん役ですね、緯糸はお母さん?うん家族だ」
面白い見方だねといわれながらも自分が理解する方法を見つけないと
織のことなどチンプンカンプンだ
基本的に数字が得意ではないので
経糸と緯糸の数の力関係は文学頭で理解しないと文章も書けない
織り機の名称とそれぞれの働きをきく
「織ってみるかい」
と言われ機に座る「高機」という種類だそうだ
経糸は常にピンと張ってある
だから強くないといけない
「ここに足を載せて」
と竹馬に乗っている感覚で木を左右交互に踏むと
経糸が口を開く「キャっ」
その経糸の間に緯糸をくぐらせていく
「うわー経糸が口を開けるんですね」
踏む、口が開く、緯糸を入れる、杼でたたく
この繰り返し
「無心になりますね」
こんな手間ひまかけたものを「着物」と言うんだ
とここでもひとしきり興奮
母たちの着物を思い返す
今見た紬という着物は常日頃家で着ているものに似ている
外出するときは少し華やかでとろっとした着物を着ているし
外から帰ってくるとその紬のような着物を肩にかけて
外出用の着物をツルッと脱いでタタタと帯を結んでいたな
実に早業でそれを見ているのは結構面白かった
そうだ
私は母に「一生着物なんて着ない」と大見えきって母に反抗していたが
結構母の着物についての記憶は鮮明だ
ツルッとしている着物を着ているときは膝の上に乗ると安定が悪く
今考えたら紬のような着物のときはいつまでも母の膝に乗っていられた
そして
あのツルッとした普段着は何だったのだろうと思い返し
「紬にも色んな種類があるのですか?」
「ハイありますようちはあの天蚕の糸を使っているのと、縞模様をいろいろ織ってみたいと考えていま
天蚕の糸は風雨にさらされて作り上げられているので染まりにくい
そのまま使うことでかえって生地に味が出るのだという
機織に夢中になっている私は
はっと気がついた
紬が作られていく過程よりなんでこの紬が松本で織り続けられているのか
それが雑誌を読む人に伝わっていかなければいけない
ここでまた頭を切り替える (つづく)
知っているのは「草木染め」
しかしこの時代は科学染めが本流で
染のことなどくどくど質問するのも憚れた
すぐ頭を切り替え「織」についての取材にする
なんと言っても織り機は上田光乃さんの卓上織り機と
くさき寺工房の機織り機しか見たことがない
なにせ母たちが「きょうはおじやにする」と言っているのを
「嫌だおじやは嫌」と食べるおじやのことだと信じて疑っていなかった
それくらいの着物音痴
だから「紬」と言われても理解不能
繭から糸を紡ぐ、その糸を経糸と緯糸にする
その2つは糸の強さが違ってくるので「撚り」のかけ方を変える
つまり経糸は強くなくてはいけない
「お父さん役ですね、緯糸はお母さん?うん家族だ」
面白い見方だねといわれながらも自分が理解する方法を見つけないと
織のことなどチンプンカンプンだ
基本的に数字が得意ではないので
経糸と緯糸の数の力関係は文学頭で理解しないと文章も書けない
織り機の名称とそれぞれの働きをきく
「織ってみるかい」
と言われ機に座る「高機」という種類だそうだ
経糸は常にピンと張ってある
だから強くないといけない
「ここに足を載せて」
と竹馬に乗っている感覚で木を左右交互に踏むと
経糸が口を開く「キャっ」
その経糸の間に緯糸をくぐらせていく
「うわー経糸が口を開けるんですね」
踏む、口が開く、緯糸を入れる、杼でたたく
この繰り返し
「無心になりますね」
こんな手間ひまかけたものを「着物」と言うんだ
とここでもひとしきり興奮
母たちの着物を思い返す
今見た紬という着物は常日頃家で着ているものに似ている
外出するときは少し華やかでとろっとした着物を着ているし
外から帰ってくるとその紬のような着物を肩にかけて
外出用の着物をツルッと脱いでタタタと帯を結んでいたな
実に早業でそれを見ているのは結構面白かった
そうだ
私は母に「一生着物なんて着ない」と大見えきって母に反抗していたが
結構母の着物についての記憶は鮮明だ
ツルッとしている着物を着ているときは膝の上に乗ると安定が悪く
今考えたら紬のような着物のときはいつまでも母の膝に乗っていられた
そして
あのツルッとした普段着は何だったのだろうと思い返し
「紬にも色んな種類があるのですか?」
「ハイありますようちはあの天蚕の糸を使っているのと、縞模様をいろいろ織ってみたいと考えていま
天蚕の糸は風雨にさらされて作り上げられているので染まりにくい
そのまま使うことでかえって生地に味が出るのだという
機織に夢中になっている私は
はっと気がついた
紬が作られていく過程よりなんでこの紬が松本で織り続けられているのか
それが雑誌を読む人に伝わっていかなければいけない
ここでまた頭を切り替える (つづく)