チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

着物が繋ぐもの 17

2018年09月14日 08時55分18秒 | 日記
信濃路は養蚕の宝庫でありまた多くの製糸業もあった
日本の製糸業の4割が信濃路で活動をしていた
製糸工場には多くの若い女性が働いていたので街は華やかでみんなの顔が明るい

上田は昔「蚕都の上田」と呼ばれていた
量も多いが糸質も良かったようだ
小岩井さんはそういう養蚕農家にも私を連れて行上田の現状を説明してくださった

蚕棚を見せてもらったり桑畑を探索したり
まだ私は蚕が苦手で独特の養蚕の匂いにも耐えられなかった
みんなが「お蚕様」と呼び家族以上の扱いを受け大事に育てられている姿に驚いた
蚕が収入源であることはもちろんだが
それ以上に蚕に対して思い入れようがあるようだ
ほとんどの農家の人が蚕に接する態度が優しくて愛に溢れていた

その姿に胸が熱くなりそこのところもルポに書き入れたらデスクにバッサリ削られた
「あちこち書くなよ読む方の頭が混乱するお前の頭が整理されてねーんだな。書き直し!」
(フンわかったわよ)
という態度でプリプリするのだが、確かにデスクのいうとおり、小岩井さんのことに集中しなければいけない

養蚕が多いので紬が生まれたという因果関係がある

養蚕農家は完成された繭を製糸業に売るのだが
その時動力機にかかる繭しか製糸業者は購入しない

汚れた繭潰れた繭二頭(蚕は一頭二頭と数える)の蚕が一つの繭を作る
このような繭は製品価値がなく農家に残される
それが半端な数ではない
それで昔の人たちは機械にかからないので手で繭から糸を引き
それを草木の汁で染め
おりはたにかけて織っていく
それが上田紬でありその他の地方の紬だ

養蚕の盛んなところでは必ずその地の特色がある紬ができた

動力機にかけられた繭の糸は白生地になり染めの着物となっていく
染めと織りそれを業界では後染め先染めと言うのだと知った

とにかく着物用語は難解であり読み方も難しいし第一かけない文字が多い
それをごく普通に使っている人たちがいることに日本の文化の深さを知る

小岩井さんが経糸を整経する
たくさんの色数がある糸が整然と並ぶ
「これだけでも充分に美しいですね」」
「見ててください、ここから横糸を通すことでもっと色が変わりますよ」
バタンシュと杼を通すと緯糸が入り色に深みが出て来る
(杼なんて言葉も初めて知る)
「成る程赤なのだけれども緯糸の黒に乗せられて渋みが出て赤が落ち着くんですね」

織りあがっていく色の不思議さ
これが紬の魅力なのかもしれない
紬には桑の木から始る蚕の旅 動物と植物の結合が一枚の布に織りあがっていく
それを纏う階級は庶民
選ばれた繭の糸で染めた着物は上流階級のもの ふーーんすごいことだね
蚕の二面性‼️つづく

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする