チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

着物が繋ぐもの 15

2018年09月09日 08時00分00秒 | 日記
次に上田に行くことにし
柿生に菊正もって相談に乗っていただいた
山崎斌さんも上田近くの出身で同志とも言える小岩井さんを紹介してくれた

山崎さんの上田に対する思い入れも強く上田を中心にした手織りの工房が動力機になったことから
手織りの技術を次の世代に伝えるために「民芸運動」も始めている
そして紬織の技術を奨励した
小岩井工場はその中心にあった

山崎さんの紹介状を持って上田に急ぐ
もちろん電話をして承諾は得ている
今の人達は紹介のとき電話を代わり相手と話をするように仕向けるが
山崎斌さんはそういうことはせず「行くからよろしく」みたいな言葉で電話を切ってしまわれたので
どういう方に合うのか全く未知数
当事は上野駅からの出発で信越線は地下ホームの暗いところにあり
なんだか寂しい感じがした

小岩井工場につくと出迎えてくださったのは凛とした美しい女性
年の頃は母の年齢のようだ
「よーくいらしたこと」
と大歓迎

早速お茶と野沢菜きゅうり漬のおもてなし
手土産に持っていった文明堂のカステラを「だいすきですよ」
と喜んでくれる

何だかすっかり打ち解けて上田紬の現状を聞かせてくれる
当事の学生運動に興味があるらしく「あなたはどうなの?」
と聞いてくるが、この私「ノンポリ」安保騒動のときも外側にいたし
メーデー参加を義務付けられたとき
行列の中で「空をゆくー」と鉄腕アトムの歌を歩きながら高らかに歌ってひんしゅくを買い
「お前はもう家に帰れ」と開放された

でも同級生で砂川基地に座り込む人もいたし(女子大だよ 当事の女子大生は政治に疎かった)
兄も学生運動をしていたのでその様子は少しは分かり
話の内容を合わせることはできた

こういう調子の良さは末っ子の特権
兄や姉のことをしっかり観察しているので大人の話についていける
小岩井さんは大喜びで世界から見た日本の状況
またこれから日本がどういう方向にむかうのかしっかり見ていないと日本の良さが危うい
という話題になり

日本の文化を背負って立つような心持ちになって話が広がっていく
明治の女性の聡明さにただただ感動して
受け売り状況の兄から聞いた話などをまぜこぜに賢そうに話す自分にきまりが悪かった

「今日は別所温泉に行って続きをおしゃべりしましょう」
「えーー?温泉があるんですか?」
「いい温泉ですよ、愛染かつらという映画をご存知?」
「姉と一緒に見ました」(姉のデートにつきあわされたんだった)
「そのロケ地も案内しますね」
予約していた宿をキャンセルして別所温泉に行くことになった

カメラマンが来るまでに撮影の段取りを決める約束だったが
ま・いいかーーと別所温泉へと行く



コメント
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