近松門左衛門作「女殺油地獄」
いま国立小劇場で21日まで文楽公演上演中
文楽鑑賞歴48年なので、いろんなコンビの上演を見せていただいた
殺されるお吉という女性は、美しい顔をしているのに身を飾らず、貞操強固、子供の世話をしながら家事万端整えている。ただし常に一言多い、人に説教する、自分に関係ある人以外にも世話焼き
こういう女は男たちにとって格好の相談相手だ、特に若い男にとっては
昔は身近にこういう女がよくいた。何事も見て見ぬ振りが出来ない、自分の領域以外の物にも手を出してしまう
自分の美しさを自分自身が感じていない、だけど子供を二人産み体に丸みが出ていて、自身が気が付かないけど匂いたつ色気を男は察知している
近松はこういう人物を登場させるのが天才
対する若い遊び人与兵衛は芸者の小菊といい中、放蕩息子だけど親から見たら可愛い、借金をつくって遊び狂っている。親は息子の回心をもとめて勘当をするが、ひそかに小金をもってお吉に渡し、「機会が在ったら倅に渡してほしいと預ける」それを潜んで聞いている与兵衛
親が立ち去ったあとあと、お吉に渡されたお金では返済金に届かない、金を貸してくれとお吉にせがむ
この時の態度がいつも小言を言われていて、更に世話焼きだから簡単に承知してくれるだろうと甘えている男の姿
しかしお吉の説教が始まる、頭に来た男は組み伏せる、その時の体の丸みに遊女とは違った女を感じる、更に身持ちの硬い女が逃げまどうとき帯がほどけて、本人も気が付かない怪しい色気をだし、逃げながら男を誘っている感じになってくる。しかしお金は貸さないと一点張り、言葉の硬さと、体の柔らかさの幻惑の中、男はもう野獣。女は油屋なので油をこぼし男を近づけないように必死、つかまっては刺され、逃げては転ぶという繰り返しの中で、男は散々に女を切り金をとって逃げるー-幕
文楽の先輩たちはここの油地獄を陰惨だけど美しく、しかも情緒的に演じていた
しかしいまは----言うまい