米マサチュ-セッツ州との姉妹関係 (おおくぼ・てつお=前在ボストン日本総領事館経済担当領事)
北海道経済活性化の鍵となる取り組みとして、海外との産業交流、 とりわけ姉妹関係にある米国マサチュ-セッツ州との産業交流を提 言したい。明治初期の開拓史時代には、マサチュ-セッツ州からク ラ-ク、ケプロンなど多くのエンジニアたちが北海道にやってきた。 同州との経済交流はまさにそのときに始まったといってよい。札幌 時計台、道庁赤レンガ庁舎、大通公園のいずれをとっても、当時の 同州の技術や技術者の影響を受けたものである。わが国の姉妹都 市交流は概して教育・文化交流に傾きがちだ。北海道と同州の交 流も戦後、北海道大学とマサチュ-セッツ州立大学アマ-スト校 (かつてクラ-ク博士が学長を務めていた)の大学交流から発展、 最近では滝川市とスプリングフィ-ルド市、渡島管内七飯町とコン コ-ド市など市町村ベ-スの教育文化交流に広がりをみせた。 1990年には、これまでの交流をベ-スに道と同州が姉妹関係を 締結、知事ミッションの相互訪問などが行われるようになった。しか しながら、同州との間の経済交流、産業交流はいまだ本格化してい ない。90年代前半には北海道の経済ミッションが同州を訪問、ボス トンで経済セミナ-がか開催され、2000年にはセル-チ元同州知 事率いる輸出促進ミッションが来道したこともあったが、いずれも目 立った成果を挙げられなかった。同州側では、農産品の売込みなど のビジネス成果がなかった州知事ミッションに州民の厳しい目が向 けられたと聞く。
05年10月には、姉妹関係15周年を記念して、吉沢慶信副知事 (当時)を団長とするミッションが同州を訪問。州政府との公式行事 以外に、道内出身のビジネス関係者との間で、実験的なバイオ分 野の産業交流の試みも行われた。しかし、道側の準備不足などか ら今年5月にボストンで行われた世界最大のバイオ産業コンベンシ ョン「BIO2007」への派遣につなげることができなかった。州政府 やマサチュ-セッツ北海道協会のビジネスメンバ-などが北海道 のバイオ関係者の受け入れに歓迎の意を表明していただけに残念 な結果であった。双方向の産業交流は、うまくいけば地域開発や産 業振興など経済や雇用に好影響を及ぼす。道内でも、かって十勝圏 がデンマ-ク・オ-フス地区と食品加工分野で、北見市がフィンラン ド・オウル市と寒冷地型建築技術分野で熱心に産業交流を行った。 いずれも日本貿易振興機構(ジェトロ)の地域間産業交流事業をうま く活用した事例であった。海外地域との姉妹都市交流も、産業交流 に視点を置き、地域がそれなりの予算と熱意ある人材を確保できれ ば、成功の可能性がある。マサチュ-セッツ州はバイオ分野では全 米有数の拠点であり、道内出身の研究者も活躍している。10年に 姉妹関係締結二十周年を迎えるのを契機に、双方のバイオを中心 とする産業交流に産官学が積極的に取り組んでもらいたいもので ある。