今日が明日になれば、ここに書くことは自分に近づくのか、それとも遠ざかるのか。ただ、あまりに時間が経つと書くことが出来なくなる。
昨日は、是枝裕和監督の『
歩いても 歩いても』を観に行った。
公開後すぐに観たいと思っていたが、いつもと同じくついつい…ではなく、是枝さんの作品公開中にはつきものの「ティーチ・イン」を楽しみにしていた。
平日だったら行けなかったが、監督と夏川結衣さんによるトークがちょうど週末に行われるということで、迷わずこの日を選んだ。
隣に座った壮年の3人組が上映中にもかかわらずごそごそ、こそこそと音を立てるのには閉口したが、家族の濃密な時間が詰まった作品を堪能した。
父が亡くなったのち、一周忌、三回忌…と、頻繁に親戚が訪れていた。そのたびに母は近所の寿司屋から上寿司をとったり、いろいろな料理を作って迎えた。父を失った悲しみは心の奥底に横たわっていたものの、たくさんの来客とともに食事を食べるのは楽しみだった。10年過ぎ、20年過ぎ、そして30年… 父のために集まってくれた人たちも、いつしか父と同じ場所に行ってしまい、残っている人のほうが少なくなってしまった。
揚げ物の油の音や、包丁がまな板をたたく音などの間から、そんなあの頃の思いが蘇ってきた。長男の命日に集まった家族の、その一日を通じて、人間の内面に深く切り込まれたこの作品を観ながら、涙がジワリと溢れ、流れてきた。
上映後、是枝さんと夏川さんによるトークが行われた。是枝さんは、見るたびにファッションが変わる…といっても、この前に見たのは4年前だった。夏川さんはこんな場に登場することはほとんどないそうだが、それでもサバサバした時の部分がかい間見えて改めて素敵な人だなあと思った。何より、もっとグラマーな印象を持っていたので、黒い衣装を着こなすスリムな姿を見て、意外に思った。
お二人に質問しようと手を挙げたが、それは叶わなかった。もしここにきていただけたらという思いを込めて、聞きたかった質問を…
夏川さんへ、
子連れの再婚という設定に、あなたのファンになったきっかけの『青い鳥』を思い出しました。物語自体の違いはありますが、あの時とこの作品とで、親を演じるということに対しどのような違いがありましたか?
是枝さんへ、
また夏川さんと仕事をしたいとお思いでしょうが、是枝さんをその気にさせる夏川さんの魅力とはどのようなものなのでしょうか?
ここを訪れてくれた人たちには、観る機会があれば、ぜひ観てほしい作品である。