毎年連休前には本をまとめ買いするのだが、このGWには一冊しか買わなかった。それ以前に買った本が開かれもせずに積まれているということもその理由だが、連休の後半に予定を入れたため、量を控えた。いや、いついくかは決めていない旅行用のガイドブックも一冊買ったが、これは「読む本」ではない。
で、その一冊が吉田修一さんの『太陽は動かない』だ。彼の作品と言えば『悪人』とすぐに連想する人が多いと思うが、その後に書かれた『横道世之介』や『平成猿蟹合戦図』も面白く、またそれ以前の作品も文庫化されたものなどを楽しんでいる。
さて、この作品は単純に言うと「スパイ小説」だ。帯にはストレートに「スパイ大作戦。」の文字がある。そんな小説だから、詳しい中身に触れるのは野暮なので、ちょっと引いたところから感想を…
さまざまな場面、さまざまな人物が登場する。それは、吉田さんのこれまでの作品にも通じる。初めのうちは彼らを点としてしか認識できないが、読み進めて行くうちに線になり、そして面となっていく。ホーチミン・シティ(サイゴン)から始まる物語は、上海、天津、香港、シンガポールといったアジアの都市が登場する。そのページからは各都市が持つ熱気が立ち上がってくるようだった。『あの空の下で』(こちらもおススメ)という本を読んだ時にも感じたのだが、吉田さんはアジアが好きなんだなって。この本を読んだ時には僕はまだ海外は想像の先にしかなかったが、昨年末に中国を訪れてみてからは、そのエネルギッシュさに魅力を感じるようになった。
主人公たちはスーパーマン的な能力を発揮して行くが、それに対し「現実的でない」などと言うのもやはり野暮である。この作品はエンタテインメントだ。
そして、物語の端々に…特に3つのシーンに吉田さんの優しさを感じた。悪を描こうとすれば凄惨な死を描くことが思い浮かぶが、彼は敢えてそれをしなかったのだろうと思う。一方、ある人の死が突然描かれていた時、微かにその先に何が描かれるのかを想像した。もう一つは、読んで感じてほしい。まっすぐな心を持った人物が登場するのは、吉田さんなりの演出だと思う。もちろん、暴力的なシーンもふんだんにあり、また、007シリーズでお約束(?)のエロティックなシーンも織り込まれている。
もしかしたら、暑い夜に徹夜で読むのがいいのかもしれないが、それまで楽しみを取っておくことはない。ただ、嵌ったら夜通しノンストップでということになるかも… 上質なアクションサスペンス映画を観終わったような満足感に浸りながら本を閉じた。
そう、『横道世之介』も映画化が進んでいるそうだ。来年の公開を楽しみに待とう。そして、吉田さんの次回作も楽しみだ。
で、その一冊が吉田修一さんの『太陽は動かない』だ。彼の作品と言えば『悪人』とすぐに連想する人が多いと思うが、その後に書かれた『横道世之介』や『平成猿蟹合戦図』も面白く、またそれ以前の作品も文庫化されたものなどを楽しんでいる。
さて、この作品は単純に言うと「スパイ小説」だ。帯にはストレートに「スパイ大作戦。」の文字がある。そんな小説だから、詳しい中身に触れるのは野暮なので、ちょっと引いたところから感想を…
さまざまな場面、さまざまな人物が登場する。それは、吉田さんのこれまでの作品にも通じる。初めのうちは彼らを点としてしか認識できないが、読み進めて行くうちに線になり、そして面となっていく。ホーチミン・シティ(サイゴン)から始まる物語は、上海、天津、香港、シンガポールといったアジアの都市が登場する。そのページからは各都市が持つ熱気が立ち上がってくるようだった。『あの空の下で』(こちらもおススメ)という本を読んだ時にも感じたのだが、吉田さんはアジアが好きなんだなって。この本を読んだ時には僕はまだ海外は想像の先にしかなかったが、昨年末に中国を訪れてみてからは、そのエネルギッシュさに魅力を感じるようになった。
主人公たちはスーパーマン的な能力を発揮して行くが、それに対し「現実的でない」などと言うのもやはり野暮である。この作品はエンタテインメントだ。
そして、物語の端々に…特に3つのシーンに吉田さんの優しさを感じた。悪を描こうとすれば凄惨な死を描くことが思い浮かぶが、彼は敢えてそれをしなかったのだろうと思う。一方、ある人の死が突然描かれていた時、微かにその先に何が描かれるのかを想像した。もう一つは、読んで感じてほしい。まっすぐな心を持った人物が登場するのは、吉田さんなりの演出だと思う。もちろん、暴力的なシーンもふんだんにあり、また、007シリーズでお約束(?)のエロティックなシーンも織り込まれている。
もしかしたら、暑い夜に徹夜で読むのがいいのかもしれないが、それまで楽しみを取っておくことはない。ただ、嵌ったら夜通しノンストップでということになるかも… 上質なアクションサスペンス映画を観終わったような満足感に浸りながら本を閉じた。
そう、『横道世之介』も映画化が進んでいるそうだ。来年の公開を楽しみに待とう。そして、吉田さんの次回作も楽しみだ。