今日は朝から苛立っていた。仕事が思うように進まず、そして、新しい仕事がやってくる。いずれも自分自身に問題がないわけではなく、むしろ日頃から断ることをなるべく避けていたから、結果として自分の首を絞めることになっていたのだろう。
そんな、後味の悪い一日を終えて帰途についた。最寄り駅に着くと一人の男性が携帯電話で月の話をしていて、夜空を見上げたら月が輝いていた。
以前、好きになった人に月の写真を送ったことがある。同じ空の下にいることを実感したかったのか、今思うと何をしていたのだろうかという感じだけど、その時はその人のことばかりを考えていた。そんな、ときめくようなことも無くなって久しい。今、いいなと思う人がいない訳ではないけど、距離の遠さもあり実感に乏しい。
シャワーを浴び、明日の朝に洗濯しようかどうかとカーテンを開けるとバルコニーの床が明るく照らされていた。
あの頃のように一眼レフカメラを取り出したりはしないけど、スマートフォンカメラのモード設定を変えながら、その月の姿を写真に収めた。
今も、その先も、一緒に月を眺める人はいないだろうと思うと少し寂しいけど、折り返しをしばらく過ぎたこの人生、捨てずにしぶとく呼吸し続けよう。