浅田次郎 著 「薔薇盗人(ばらぬすびと)」を読みました。

浅田次郎らしい、人間の哀歓を描く、6短編集です。
中でも一押しの話が
「あじさい心中」
出版社をリストラされたカメラマンと寂れた温泉街の場末のストリップ劇場であったストリッパーとの物語。
前半、元カメラマンのストーリーと思っていると、後半の幸薄い人生を歩んできたストリッパーの独白になっていく。
年端のいかない頃、望まれない結婚生活の末、生まれた赤子。
やがて引き離されるとわかっている我が子に知っている限りの物語を聞かせてすごしたふたりっきりの正月というシーンがただただ泣かせる・・・。
その他に
「薔薇盗人」
「親愛なるダディと、ぼくの大好きなメイ・プリンセス号へ」―豪華客船船長の父と少年をつなぐ寄港地への手紙。
父の大切な薔薇を守る少年が告げた出来事とは―
「死に賃」
親友の死を前にして老経営者が苦痛なく死ぬことができる方法という怪しいセールスに乗ってしまう話。
など。
通勤途中で読むのにはちょうどよい短編集です。