以前、京都の古美術関係の会社に1年ほどいたことがあるので、それまであまり馴染みのなかった日本画の展覧会も見に行くようになりました。筆で描いた線の美しさ、空白による空間の広がり、墨の濃淡だけで描く奥の深さ、湿度を感じる色彩など、油絵とはまた違った描き方が新鮮に感じられたものです。
伊藤若冲の名も、そのころ知ったのでしょうか。ああ、鶏の絵を描いた画家だ、くらいは知っていました(それだけ
)。
そんな私がこの絵画展に興味を持ったのは、日本家屋の自然光のもとで屏風や掛け軸を見ると、光の加減によって見え方が変化する云々という記事を読んだからです。
それは私にはちょっとした衝撃でした。今まで何の違和感もなく、あたりまえのこととして美術館で絵画を見てきましたが、これは本来の姿ではないんだ、と気づいたわけです。宗教画であれば教会に、掛け軸であれば床の間に飾ってあるもの。一定の光の当たる美術館で見るのと、薄暗い日本家屋で障子を通した光で見るのとでは、絵の見え方も自ずと違ってくるのは当たり前。この「若冲と江戸絵画展」ではそのことに着目してあるようだったので、どうしても見てみたいなあと思っていました。
それに若冲ファンのアーティチョークさんから、プライスコレクションって凄いのよ~、なんて聞いていたもので、期待はますばかり・・・
当日は朝一番に入ろうね、とアーティチョークさんと計画していたので、前の晩に夕飯もつくり、洗濯もすませておいて、7時前には家を出て電車に乗りました
その甲斐があって開館前には美術館に到着し、まだ人の少ないうちにゆっくり鑑賞することができました。
日本画を見るのは久しぶりのことです。墨で描いた繊細な線、太い筆で一気に描いた大胆なタッチ、やはり日本画の素晴らしさは線の美しさにあるんだなあ、と改めて思いました。そういえば、父が若いころ南画を習っていて、初めのうちは線ばかり描かされた、と言っていました。たかが線、されど線、ですね~。
若冲の絵は鳥獣花木図屏風のように、桝目描で色鮮やかに描かれ度肝を抜かされるような作品もありましたが、私には墨で描かれた作品が軽妙でリズム感があり新鮮に映りました。また鶏を描いた絵はやはり独特で、なんとも不思議な雰囲気が漂い、これを見た江戸の人たちはさぞ驚いたことだろうなあ、と思いました。
たくさんある作品の中で、思わず立ち止まって見入った作品があります。それは葛蛇玉が描いた「雪中松に兎・梅に鴉図屏風」。屏風全体に墨をひいて漆黒の闇を作り出し、塗り残した白い部分に雪の積もった松を描き、胡粉を全体に散らして降りしきる雪を表しているのです。その屏風の前に立つと、自分がまるで降りしきる雪の中にいるようで、暗闇に降り積もる雪が感じられるようでした。(一番下にある絵葉書がその屏風の一部ですが、よくわからないですね
)。
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一番見たかったのは、自然光で鑑賞できるという酒井抱一の十二か月花鳥図です。どこにあるのかなあ、と気にしていたら、見終わって一階に下りたとき窓際の広いスペースに、一幅ずつ床の間を再現して飾ってありました。それも、光が斜めからあたるように掛けてあります。
この日はお天気がよくて明るい光の下で見ていたのですが、さーっと日が翳ってくると色鮮やかだった菖蒲の青が落ち着いた青に変わり、その雰囲気の変わりように驚いたのでした。
たとえば、明るい光の下では派手な印象を受ける金箔を貼った屏風も、薄暗い座敷で見たら、それは金が鈍く怪しく輝いて、異空間にでもいるような印象を受けることでしょう。そういうことまで計算して、描かれているのかどうかわかりませんが。お姫様にでもなって(?)、そんな贅沢な空間にこの身をおいてみたいものです(もちろん無理です~
)。
屏風や掛け軸って、今まで深く考えたことはなかったのですが、これらは日本家屋だからこそ生まれたひとつの表現の形態なのですね。油絵は、印象派のように絵の中に光と影があるけれど、日本画は絵の外に光と闇が存在するということかなあ。
日本画の奥の深さを知る、とてもいい機会となりました。
誘ってくださった、アーティチョークさんに感謝
伊藤若冲の名も、そのころ知ったのでしょうか。ああ、鶏の絵を描いた画家だ、くらいは知っていました(それだけ
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そんな私がこの絵画展に興味を持ったのは、日本家屋の自然光のもとで屏風や掛け軸を見ると、光の加減によって見え方が変化する云々という記事を読んだからです。
それは私にはちょっとした衝撃でした。今まで何の違和感もなく、あたりまえのこととして美術館で絵画を見てきましたが、これは本来の姿ではないんだ、と気づいたわけです。宗教画であれば教会に、掛け軸であれば床の間に飾ってあるもの。一定の光の当たる美術館で見るのと、薄暗い日本家屋で障子を通した光で見るのとでは、絵の見え方も自ずと違ってくるのは当たり前。この「若冲と江戸絵画展」ではそのことに着目してあるようだったので、どうしても見てみたいなあと思っていました。
それに若冲ファンのアーティチョークさんから、プライスコレクションって凄いのよ~、なんて聞いていたもので、期待はますばかり・・・
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当日は朝一番に入ろうね、とアーティチョークさんと計画していたので、前の晩に夕飯もつくり、洗濯もすませておいて、7時前には家を出て電車に乗りました
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日本画を見るのは久しぶりのことです。墨で描いた繊細な線、太い筆で一気に描いた大胆なタッチ、やはり日本画の素晴らしさは線の美しさにあるんだなあ、と改めて思いました。そういえば、父が若いころ南画を習っていて、初めのうちは線ばかり描かされた、と言っていました。たかが線、されど線、ですね~。
若冲の絵は鳥獣花木図屏風のように、桝目描で色鮮やかに描かれ度肝を抜かされるような作品もありましたが、私には墨で描かれた作品が軽妙でリズム感があり新鮮に映りました。また鶏を描いた絵はやはり独特で、なんとも不思議な雰囲気が漂い、これを見た江戸の人たちはさぞ驚いたことだろうなあ、と思いました。
たくさんある作品の中で、思わず立ち止まって見入った作品があります。それは葛蛇玉が描いた「雪中松に兎・梅に鴉図屏風」。屏風全体に墨をひいて漆黒の闇を作り出し、塗り残した白い部分に雪の積もった松を描き、胡粉を全体に散らして降りしきる雪を表しているのです。その屏風の前に立つと、自分がまるで降りしきる雪の中にいるようで、暗闇に降り積もる雪が感じられるようでした。(一番下にある絵葉書がその屏風の一部ですが、よくわからないですね
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一番見たかったのは、自然光で鑑賞できるという酒井抱一の十二か月花鳥図です。どこにあるのかなあ、と気にしていたら、見終わって一階に下りたとき窓際の広いスペースに、一幅ずつ床の間を再現して飾ってありました。それも、光が斜めからあたるように掛けてあります。
この日はお天気がよくて明るい光の下で見ていたのですが、さーっと日が翳ってくると色鮮やかだった菖蒲の青が落ち着いた青に変わり、その雰囲気の変わりように驚いたのでした。
たとえば、明るい光の下では派手な印象を受ける金箔を貼った屏風も、薄暗い座敷で見たら、それは金が鈍く怪しく輝いて、異空間にでもいるような印象を受けることでしょう。そういうことまで計算して、描かれているのかどうかわかりませんが。お姫様にでもなって(?)、そんな贅沢な空間にこの身をおいてみたいものです(もちろん無理です~
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屏風や掛け軸って、今まで深く考えたことはなかったのですが、これらは日本家屋だからこそ生まれたひとつの表現の形態なのですね。油絵は、印象派のように絵の中に光と影があるけれど、日本画は絵の外に光と闇が存在するということかなあ。
日本画の奥の深さを知る、とてもいい機会となりました。
誘ってくださった、アーティチョークさんに感謝
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