「ゆれる」
ずっと、観たいなあと思っていたオダギリジョーの話題作「ゆれる」。
冬ごもりの連休に、ようやくDVDで観ることができました。
ふと目にする雑誌の広告やポスターで、
法廷シーンのオダギリジョーのあの暗い表情を見るたび、
どきどき、そわそわしてました。
観たいけど、なんだか重~いものを抱え込んでしまいそうで。
実際、最近ハリウッドの娯楽大作しか観ていない私には、
非常に重く、そして、とても見応えのある作品でした。
観終わってまず最初に感じたのは、
なんて上手い役者さんたちなんだろう、でしたからね~(笑)
複雑な内面を表現するわずかな表情の変化、
人生すら感じさせる無言の背中、
とても意味を持つ何気ない会話、
ドキッとさせられる映像。
対照的な兄弟を演じる香川照之さんとオダギリの演技は、
寡黙でありながら演技に内面が滲み出てくる香川さんと、
一見派手そうで、淡々と複雑な心境を演じるオダギリの、
緊張感漂うものでした。
何度、息を詰めて見ていたことか・・・。
兄弟という、かつては一緒に暮らし、
血は繋がっていながら全く違った個性を持ち、
別々の人生を送る複雑なつながり。
その心の深淵にあるものは何なのか。
吊り橋から転落死した女性をめぐり、
事故なのか事件なのか、何が真実なのか。
観ているこちらも、心はゆれまくっています。
そしてラストシーンを観ても、
果たしてこの兄弟は、この後どうなってしまうのだろう、
と気がかりな思いを残したまま終わってしまうのです。
あの、揺れる吊り橋を渡ったときから、
もうもとへは戻れなくなった兄弟の思い。
その兄弟の間で(というか、弟のせいで)
揺れ動き、切ないほどの思いを抱いて、
転落死してしまった女性が哀れでした・・・。
先日、日本アカデミー賞で「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」が
意外にも(!)たくさん賞をとりましたが、
私はこの「ゆれる」のほうがずっとよかったと思いました。