万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

伴大納言絵巻が語る激動の政治史

2009年03月19日 12時09分31秒 | 日本政治
 『伴大納言絵巻』という平安時代末期、後白河法皇のサロンで制作された一本の傑作絵巻があります。この絵巻は、貞観八年(866年)閏三月十日に大内裏の正門、応天門が焼けた事件を発端として、その年の八月に、あろうことか当時、大納言という高位にあった伴善男が放火犯として逮捕されるという、平安政界の一大疑獄事件を扱ったものです。
 ところで、この絵巻には、大きな謎があるとされてきました。清涼殿の東庭に一人佇む衣冠束帯の後姿の人物が、誰であるのかわからなかったのです。また、絵巻の主人公である伴大納言の姿が、何故か不思議なことに描かれていません。
 私の姉は、絵巻の謎解きを試み、昨今、『古代史から解く 伴大納言絵巻の謎』(勉誠出版 2009年)を出版いたしました。応天門の変を契機に、当時太政大臣であった藤原良房が摂政に就任し、時代は、摂関政治の成立へと進んでゆきます。この書は、絵巻の謎解きのみならず、日本の政治史上における重大事件、すなわち摂関政治の成立についても新たな説を提示しており、政治好きの方々にも、興味深く読んでいただけるものと思います。姉の研究の紹介となり、心苦しい限りですが、何とぞ、よろしくお願い申し上げます。

古代史から解く伴大納言絵巻の謎
倉西 裕子
勉誠出版

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コメント (7)
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