万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

日本のバブル崩壊と現在の金融危機は違う?

2009年03月04日 15時38分21秒 | 国際経済
 世界的な金融危機を受けて、どの国も、対策に頭を悩ましています。こういう時には、過去の処方箋を持ち出してくるものなのですが、過去と現在とでは、共通点もあれば、相違点もあります。それでは、日本国のバブル崩壊と現在の金融危機とでは、どのような点が違っているのでしょうか。

(1)金融商品による連鎖性が高いこと
 日本国のバブルは、不動産部門におけるバブルが株式市場といった他の投資分野に拡大しました。今回の金融危機では、これに加えて、CDSという新手の金融商品が登場しており、一旦、どこかで破綻が起きますと、その連鎖性と速度は格段に高くなります。しかも、CDSは、海外にも販売されているため、その被害は、一国に留まらなくなります。

(2)世界同時危機であること
 日本国のバブル崩壊の場合には、日本発の世界恐慌が心配されたものの、結局、他国に飛び火することがありませんでした。このため、日本国は、好景気の諸国への輸出を増やしたり、新たに海外市場を求めることもできたのです。しかしながら、今回の金融危機は世界同時ですので、どの国も、同様の政策をとることはできそうにありません(市場の自律的調整力が働かない・・・)。

(3)低金利政策の効果が低いこと
 国民の貯蓄率の高い日本国では、低金利政策は、預金金利を低下させ、これが、金融機関の体力回復に大きく貢献しました。一方、間接金融が中心の国では、低金利政策の金融機関救済効果は薄くなります。

(4)為替政策の効果に限界があること
 日本国の場合には、バブル崩壊後の市場介入による円安政策は、自国製品の輸出競争力を高める働きをしました。ところが、現在では、中国が、より戦略的な元安政策を実施していますので、ドルやユーロをはじめ、どの通貨も、産業競争力の強化になかなかつながりません。

 以上のように見てきますと、日本国のバブル崩壊よりも、現在の金融危機の方が、はるかに克服することが難しいことが理解できます。過去の政策は、必ずしも現在の病状に効くわけではありませんので、政策の効果は、慎重に見極める必要がありそうです。 

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コメント (12)
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